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秋冬シーズンに食べたくなるぶり・たら・さば!それぞれの魚の強化ポイントと食卓シーンとは?

秋になるとさんま、秋鮭、もう少し秋が深まるとぶり、たらと美味しい魚がいっぱい出回ってきます。今年のさんまは3年連続で記録的な不漁と言われている中、水産部としてはどの魚をどういった売り方で売っていけば、お客様にもっと喜んでいただけるのでしょうか。切身、丸物などの鮮魚カテゴリーの売上が年間で最も上がる秋冬シーズン、今回は秋冬によく食べられている魚の中からぶり、たら、さばに注目してそれぞれの魚の年代や平日休日別での食卓シーンを見ていきたいと思います。


目次

●水産部の切身、丸物販売の正念場!秋冬に売れる魚種はなに?

まずは水産部の刺身類、塩干加工品を除いた鮮魚カテゴリーの週別での売上推移をみてみます。

既報記事、「コロナ禍以降、鍋つゆの売上げが好調!2021~2022鍋シーズンの強化ポイントは?」「あったかメニュー定番のシチューはお盆明けから売上げ上昇!クリーム・ハヤシ・ビーフの食シーンと求められているコトとは?」にて鍋つゆ、シチューとお盆明けから売れる商品をこれまでみてきましたが、実は鮮魚カテゴリーもお盆を底にじわじわと秋冬シーズンに売上が上がっていることがわかります。そして年末をピークに1月から夏に向けて徐々に売上が減少する、という流れになっています。 では、どういった魚が特に秋冬によく食べられるのでしょうか。

水産部すべてのカテゴリー内での月別での魚種別売上ランキングがこちらです。サーモン刺身、さけの切身、塩鮭など各カテゴリーで強い商品を持っているさけが年間を通して1位となっています。また、秋冬に旬を迎えるぶり・はまちは年間通してTOP10入りしていますが、特に12月、1月にはまぐろを超えて第2位となっています。その他、9、10月に特化するさんまや11~2月に特化するかき、9月から上昇しだして3月4月に落ち着いてくるさばやたらなどが代表的な秋冬の魚と言えそうです。今回はこの中から10月~4月が主に最盛期となるぶり、たら、さばを深堀していきたいと思います。

●ぶりについて。売れるタイミングや年代、求められている食卓シーンは?

一般的に魚の消費は地域差が大きいですが、ぶりはどのようになっているのでしょうか。

ぶりは全国での支出の差が激しく、最もよく食べる北陸地方とあまり食べない沖縄地方では年間平均支出金額に約8倍の差があります。また、お正月にぶりを食べる習慣のためか、北陸地方や近畿地方以西では12月に特にぶりの支出金額が跳ね上がります。そういった違いが出ている一方で、秋冬に支出が増えるという傾向自体は、北海道地方、沖縄地方を除いた本州では程度の差はあれ共通しており、ぶりは多くの地方にとって秋冬の代表的な魚と言えそうです。

次に、ぶりの販売時の形状別での売上推移をみてみました。ぶりは切身と刺身の売上が大きいですが、主に切身の影響で秋冬に大きく売上を伸ばしています。では、直近のぶりの切身の売上の動きを見てみましょう。

ぶりの切身の売上は、2020年コロナ禍での内食需要の高まりをきっかけに好調に推移していましたが、2021年の4月から前年割れを起こしてしまっています。さらに、この売上の動きを若年、高齢それぞれにわけてみてみました。

2020年の秋冬シーズンは若年、高齢どちらも前年の売上を越えていますが、特に若年でその幅が大きくなっていることがわかります。長期的にお魚の売上を維持するためには若年に買っていただくことが必須となっており、2020年度好調だった若年を今年もしっかりと取り込んでいくことが必要です。とはいえ売上ボリュームは現時点で若年と高齢で3~4倍違っていますので、メインターゲットとなる高齢への販促も欠かすことはできません。具体的にはどういったメニューで売り込んでいけばよいのでしょうか。

ぶりが最もよく売れる10月~4月に、ぶりと一緒に購入されやすい商品を調べてみました。水産売場で買うので他のお魚も一緒に買われやすかったり、年末商材であるぶりの性格上数の子やおせちなどと一緒に購入されやすかったり、といった特徴もありますが、注目すべきは和風加工調味料の買われやすさと大根の購入点数の高さです。和風加工調味料の中身を調べてみると、ぶりの照焼のたれとぶり大根のたれの2種類が上位を占めていました。また、大根はぶり大根に使用する用途と推測されますが、ぶり購入者のうち1割以上の方が同時に購入しており、ぶり大根がぶりにとって重要なメニューであることがここからもわかります。

では、ぶりの照焼とぶり大根はどの時期によく食べられるのでしょうか。それぞれのたれの動きを調べてみました。

図⑧はぶりの照焼のたれとぶり大根のたれの月別売上推移です。3月~10月まではぶりの照焼のたれがよく買われていますが、ぶりシーズン最盛期の11月~2月は両者の売上金額が拮抗していることがわかります。大根の旬の時期は主に11月~2月と、ちょうどぶり大根のたれの売上が上がる時期とリンクしているのですが、実は大根自体の売上金額のピークは10月となっています。ぶりの売れ始めの時期や終わりかけの時期には照焼メニュー主体でメニュー提案・献立提案を行い、11月~2月には、旬の大根をもっと食べていただくためにも、ぶりの照焼だけでなく、ぶり大根の販促に力を入れるとよいのではないでしょうか。

続いて、ぶりの照焼やぶり大根が何曜日によく食べられているのかみてみました。

もともとぶりの切身は土曜日に購入されやすい傾向がみられますが、ぶりの照焼のたれ、ぶり大根のたれは簡便調理ができるメニュー調味料という性格上、やや平日に買われやすい傾向が出ています。また、一から手作りする場合を想定して、大根と生姜を同時に購入した際のぶりの切身の曜日別での売上構成比もとってみると、土日に特に購入されやすいことがわかりました。日曜日の購入が多くなる傾向はわずかですがぶり大根のたれの売上構成比にも表れており、平日は簡単にできるぶりの照焼を、休日は少し手間がかかるけれども旬を楽しめるぶり大根を提案すると、お客様に喜んでいただける売場を作ることができます。このぶりの照焼やぶり大根について、年代別での買われやすさも調べてみました。

ぶりの切身は70代のお客様で全体の売上の3割を占めておりもともと高齢に買われやすい魚ですが、ぶり大根はメニュー調味料使用でも手作りでも高齢の方に好まれやすいメニューと言えます。ぶりの照焼のたれはぶり大根より少し左によっており、40代~60代に支持されていますが、若年層へのアピールという点ではいずれのメニューも少し訴求力に不安が残る結果となってしまいました。若年層はぶりに対してどういったメニューを求めているのでしょうか。最近人気のメニューとしてはぶりしゃぶがあります。鍋素材との買われやすさについても調べてみました。

突出して買われやすいものはありませんが、どの鍋素材もリフト値が2前後と平均して高めとなっており、ぶりしゃぶがぶりメニューの一つとして楽しまれていることがわかります。また、若年と高齢ではほとんどの素材で若年の方がよく買われており、若年に楽しんでいただきやすいメニューと言えそうです。

ぶりの食卓シーンについて、イラストにまとめてみました。

平日メニューの定番はブリの照焼です。簡便調理ができるという目的に加えて、手作り派の方にもメニューを想起させる役割を持つぶりの照焼のたれをぶりの隣に並べて売り込みましょう。また、付け合わせ用に菜の花やホウレン草などの緑の野菜も購入されやすくなっていますので、あわせて献立提案するとより喜んでいただける売場になります。休日には、若年向けにはぶりしゃぶの、高齢向けにはぶり大根の提案をおすすめします。「同じ素材でも違った楽しみ方ができる」というのは特に若年に刺さりやすいキーワードとなっていますので、ぶりしゃぶを販促する際には刺身でも食べられる鮮度のカット商品を、「はじめはお刺身で、お好みでしゃぶしゃぶして2通りのおいしさが味わえる」という謳い文句で若年向けに売り込んでみてはいかがでしょうか。また、ぶり大根の提案ではメニュー調味料の陳列とともに大根や生姜も合わせて置くことで、簡便調理をしたい方にも、イチから手作りしたい方にも対応することができます。お客様がぶりの売場を見ただけでメニューが思い浮かぶような売場づくりをしていきましょう。

●たらについて。平日、土日それぞれで作られるメニューとは?

続いて、たらについてみていきたいと思います。

スーパーで売られているたらには生たらの切身と塩たらがありますが、どちらも9月から売上が上がりはじめ、10月~4月頃までがよく売れるシーズンとなっています。

図⑭は10月~4月にたら切身・塩たらと一緒に購入されやすい商品を買われやすさの度合いが高い順に並べた表です。すべての商品が鍋によく使われる商品となっています。特に塩たらは多くの商品でたら切身以上に買われやすさの度合いが強くなっています。これだけ見ると、冬場のたらは鍋需要一択!というように見えてきます。しかし、本当に冬場のたらは鍋用カットのみ売っていればよいのでしょうか。

鍋つゆとたら切身、塩たらの買われやすい曜日について調べてみました。鍋つゆは圧倒的に土日に買われやすいのに対し、たら切身や塩たらは平日、特になぜか水曜日に買われやすく、土日メニューである鍋以外でも購入されていることがわかります。たらは春夏にも一定の売上を保っており、そこでは鍋以外のメニューで使われていることもあわせて考えると、秋冬だからといって鍋メニュー一色にしてしまっていいわけではなさそうです。たらの王道メニューといえばムニエルがありますが、単体で完結するメニューのため買い物カゴには表れにくくなっています。また、鍋にも使われる材料を使うのでデータ上では見逃しがちですが、きのこを使ったホイル焼きなどもたらの人気メニューとなっており、特に若年で秋冬でもムニエルやホイル焼きの食卓登場が多いというデータもあります。また、高齢では鍋ほど大げさではない、白菜や豆腐との炊き合わせのようなメニューもよく出ているようです。

たらの食卓シーンをイラストにまとめてみました。土日に鍋用カットや魚介の切身や貝類の盛合せをしっかりと売り込むだけでなく、平日にも若年、高齢それぞれの需要にあわせたメニュー提案をしていくことをおすすめします。

●さばについて。どのタイミングでどのように強化すればいい?

最後に、さばについてもみていきます。さばもぶりと同じく、地域によって支出のされ方に差が出る魚です。

ぶりは地域によって食べる、食べないの差が非常に大きい魚でしたが、さばはそれよりは差が小さく、年間通しての平均支出金額では最もよく食べる九州地方と、あまり食べない東北地方での差は約2倍にとどまっています。しかし、月別の動きをみてみると沖縄を除く東海以西の地方では秋冬の支出が顕著に上がるのに対し、関東、北陸以東の地域では年間通しての支出の差が少なくなっており、北陸や北海道、沖縄ではむしろ春夏の支出の方が大きくなっているほどです。地域によっては、さばに秋冬の魚というイメージがあまりないところもあるようです。では、さばの販売時の形状別での売上はどのような動きをしているのでしょうか。

さばは塩さばの占める割合が最も大きく、ぶりやたらほど秋冬の売上上昇がはっきりと見られません。しかし、生さばとさば切身の動きを見てみると、10月から3月、4月までの売上が高くなっており、ぶりやたらと同じく、秋冬によく食べられていることがわかります。

生さば、さば切身の購入されやすい曜日も調べてみました。ぶりやたらは土日にも上がっていましたが、さばは生さば、さば切身ともに平日に購入されやすい魚ということがわかります。特にさば切身は月曜や火曜の購入が多くなっています。週の前半に売上が上がる動きは、ダイエット商品やロカボ商品に同じようにみられますが、さばは魚の中でも健康イメージが強く出ている魚種なので、週の前半には健康的な食材を食べたい、というニーズを受けてこのような動きになっているのかもしれません。

さばの代表メニューと言えば、味噌煮や煮付け(醤油煮)ですが、それぞれのメニューはどのような動きをしているのでしょうか。図⑳は味噌煮のたれ、煮魚のたれそれぞれをさばと同時に購入した時の、さばの売上推移をみたグラフです。煮魚のたれと味噌煮のたれ単体では煮魚のたれの方が年間で3.7倍ほどよく売れるのですが、さばとの同時購入で見ると味噌煮のたれの方が煮魚のたれの約5.4倍売上が高くなっています。その傾向は秋冬に顕著で、さばの売上があがる10月~3月には特に味噌煮の売上が高くなります。煮魚のたれは年間通して比較的安定しているのですが、味噌煮のたれよりも少し遅れて売上が上がり始めているようです。さばには味噌煮、というイメージを持たれている方が多いようですが、地域によっては味噌煮よりも煮付けで食べられることが多いところもありますし、さばの食べ方のバリエーションとして味噌煮の売上がピークに達した1月頃からは積極的に煮付けの提案もしてみてもよいかもしれません。

生さば、さば切身、味噌煮のたれと同時購入時のさば(切身・生さば)、煮魚のたれと同時購入時のさば(切身・生さば)、それぞれについての年代別での売上構成比もみてみました。生さば、さば切身ともに年代別での構成比がほぼ一緒で、ぶりやたらと比べても高齢の購入率が高い魚です。また、煮魚のたれとさばの同時購入時にはさば単体よりも高齢に寄っているのも珍しい特徴のひとつです。魚の売上を長期的にあげるには若年層へのアピールが欠かせません。このままではさばは若年に買っていただけないお魚となってしまいかねない状況ですので、まずは若年層に支持されている味噌煮のたれをしっかりと売り込むこと、そして煮付けに関してはイメージのない若いお客様にも購入いただけるようにメニューとしての認知度をあげていくことで、より幅広いお客様に購入いただけるようになるのではないでしょうか。


今回は秋冬に売上があがる鮮魚カテゴリーの中から、ぶり、たら、さばに注目してそれぞれの食卓シーンを調べてみました。主に魚の切身の状態が秋冬に食べられる、という共通点はあるものの、それぞれで買われやすい年代や曜日などが大きく違い、それにあわせて販促方法も変えていく必要があると感じました。鮮魚カテゴリーとしては前年と比べると今年は売上が苦しくなりそうな動きをしていますが、お客様のニーズをとらえて買っていただきやすい売場を作ることで、少しでも売上を上げていければと思います。

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