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あったかメニュー定番のシチューはお盆明けから売上げ上昇!クリーム・ハヤシ・ビーフの食シーンと求められているコトとは?

冬のあったかメニュー定番のシチューですが、シチュールーの売上げは鍋つゆと同じくお盆明けから上昇してきます。そして鍋つゆを買うお客さまが野菜・お魚・お肉・水物などの鍋具材も一緒に買ってくれることで買い物金額が大きくなるように、シチュールーを買うお客さまも一緒に野菜・お肉を一緒に買ってくれることで同じように買い物金額が大きくなります。今回はおうちでシチューをしようと思うお客さまに喜んでもらえる売場づくりについて考えていきたいと思います。


目次

●シチュールーの売上げ動向について。クリーム・ハヤシ・ビーフの順で約9割占める。

家庭の食卓に登場するシチューは約6~8割がシチュールーを使用して作られているようです。そこで、スーパーでのシチュールーの売上げ推移を見ていきます。

スーパーでのシチュールーの売上げは毎年お盆期間を底にして、お盆明けから急に売上げを伸ばしていることがわかります。10月には早くも売上げピークを迎え、11月12月1月と同じぐらいの売上げを保ち、2月から少しずつ減少するという流れになっています。 プロローグにも記しましたが、シチュールーに注目する理由は、シチュールーを買われる方の買い物カゴのバスケット単価、つまり1回当たりの買い物金額の高さにあります。

既報記事「コロナ禍以降、鍋つゆの売上げが好調!2021~2022鍋シーズンの強化ポイントは?」にて、「鍋つゆの入っている買い物カゴには、野菜・お魚・お肉・水物などの鍋具材がいっぱい入っており客単価が跳ね上がるので、お鍋をしようと考えるお客さまを集めるのが重要!」とお話しましたが、シチュールーも鍋つゆと同じぐらいの客単価になっています。次章で詳しく述べますが、シチュールーは特に野菜とお肉を極めて高い確率で一緒に買わせる力の強いトリガー商品となっており、お店全体の売上げアップにもつなげられる重要な商品のひとつと言えます。 シチューには、クリームシチューやビーフシチューなどがありますが、シチュールーの種類別の売上げ割合も調べてみました。

クリームシチューがやはり一番大きく、シチュールー全体の約46%となっています。続いてハヤシ・ハッシュドビーフが約29%、ビーフシチューが約14%と続き、この3種類で全体の約9割を占めています。

図④はクリーム、ハヤシ・ハッシュドビーフ、ビーフ、それぞれのシチュールーの月別売上げ推移です。クリームシチュールーは5~8月の夏の期間は売上げが小さくなり、9月から急激に売上げが伸びて10月をピークに秋冬期間に大きな山ができています。ビーフシチュールーも8月を底にして、12月をピークにした秋冬に山が出来ています。一方で、ハヤシ・ハッシュドビーフのシチュールーは比較的年間変動が少ないですが、秋冬期間よりも初夏の4月前後におだやかな山ができており、夏の期間はクリームよりも売上げが大きくなっています。

クリーム、ハヤシ・ハッシュドビーフ、ビーフ、それぞれのシチュールーでは買われている年代についても違いがあるようです。

黄色の面グラフはスーパーの食品全体の年代別売上げ構成比で、この面グラフから右にずれると高齢層に買われがち、左にずれると若年層に買われやすい、ということを表しています。ハヤシ・ハッシュドビーフのシチュールーは最も左に寄っており、40代をピークにした若年層に購入されやすくなっています。ビーフシチュールーは50代をピークにした若年層から中年層に買われやすく、クリームシチュールーは若年層から高齢層まで幅広い年代に支持されていることがわかります。

図⑥はクリーム、ハヤシ・ハッシュドビーフ、ビーフ、それぞれのシチュールーの曜日別売上げ構成比です。黄色の面グラフはスーパーの食品全体の曜日別売上げ構成比で、この面グラフの上にあるか下にあるかで、どの曜日に買われやすいかがわかります。クリームシチュールー、ハヤシ・ハッシュドビーフのシチュールーは月曜日から金曜日で多く、週末には大きく落ち込むことから、普段の平日のおかずメニューとして利用されていることが予想できます。ビーフシチュールーはこれら2品よりは平日の売上げが弱く、逆に週末の構成比は大きくなっていることから、ビーフシチューは平日のおかずメニューという性格も持ちつつ、週末のハレの日メニューという一面も併せ持っているメニューのようです。 次章において、クリーム、ハヤシ・ハッシュドビーフ、ビーフ、それぞれのシチュールーの入っている買い物カゴを分析していくことで、それぞれの食シーンや求められているコトを探っていきます。

●クリーム、ハヤシ、ビーフ、それぞれの食シーンと求められているコト。

◇クリームシチュールーの入っている買い物カゴからわかること。

クリームシチュールーと一緒に買われやすい商品について一覧にまとめてみました。

クリームシチュールー購入者の1,000人当たり購買点数とは、例えばクリームシチュールーを買った人1,000人の内、牛乳を買った人は435人もいることを示しています。また、全てのお客さまでは牛乳は1,000人当たり175人が買っている商品なので、435人/175人=2.5、つまりクリームシチュールーを買う人は全てのお客さまの2.5倍牛乳を買いやすいことをリフト値で表しています。

一覧の中では野菜が一緒に買われやすく、特にじゃがいも、きのこ、玉ねぎ、にんじんの購買点数の高さが目立ちます。きのこの中ではしめじが多くなっています。ブロッコリーも約13%の方が一緒に買っており、彩りを気にする若年層の方が良く買っているようです。コーン加工品も若年層で一緒に買われる傾向が出ており、やはりこちらも彩りを気にして作られているのでしょうか。

お肉では鶏肉が正肉・切身合わせて約34%で一緒に買われています。豚肉も切り落とし・小間切れやうす切りが一緒に買われていますが、リフト値が鶏肉ほど高くないことから、たまたま一緒の買い物カゴに入っている状態も多いようです。リフト値の高さから、クリームシチューのお肉の具材としては鶏肉が多く使われていると言えます。鶏肉、豚肉の次にはベーコンがシチューの具材として買われており、厚切りベーコンのシチューが人気のようです。購買点数は高くないのですが、ロールキャベツ半惣菜がクリームシチュールーと一緒に買われやすくなっているので、アレンジメニューの提案として面白そうです。

野菜、お肉以外では、牛乳の購買点数が高くなっています。牛乳は必要材料であると同時に常備品ですので、クリームシチューで大量に使う機会に一緒に買っていることが予想されます。牛乳と一緒に、ホイップクリーム・生クリームもコク出しで使う方もいらっしゃるようです。

フランスパンは若年層と高齢層の違いが大きく、若年層(20~40代)だけだと、同時購買点数が25、リフト値も5まで上昇してきます。クリームシチューにはご飯ではなくパンを合わせたいのは若年層に多いことがわかります。 クリームシチューの食卓には野菜サラダのイメージがありますが、意外とレタスなどの葉物サラダ野菜のリフト値は高くありませんでした。ツナやマヨネーズなどが買われやすいことから、ツナサラダやマカロニサラダが献立として合わせられているのではないでしょうか。

◇ハヤシ・ハッシュドビーフのシチュールーの入っている買い物カゴからわかること。

ハヤシ・ハッシュドビーフのシチュールーと一緒に買われやすい商品についての一覧はこちらです。

どのシチュールーもきのこが一緒に買われやすいのですが、最も購買点数が高いのがハヤシのシチュールーです。きのこの中でもマッシュルームが多く買われています。しめじやエリンギなども高いので、複数のきのこを使って仕上げる方もいらっしゃるようです。ハヤシライス、ハッシュドビーフには玉ねぎが必須なので約43%の方が一緒に買っており、残りの約57%は常備野菜の玉ねぎを利用する方でしょうか。

お肉では牛切り落とし・小間切れが約44%で一緒に買われています。リフト値も14.5と、ハヤシ・ハッシュドビーフのシチュールーを買う方は普段の14.5倍、牛切り落とし・小間切れを買いやすくなっています。既報記事「スーパー畜産部での長年の不振カテゴリーである牛肉…。特に課題だった若年層向けの牛肉消費が今伸びてきている!」にて、平日に牛肉をあまり買わない若年層にはハヤシルーの販促がおすすめ!と書きましたが、その通りのデータになっています。

野菜、お肉以外では、トマト加工品のリフト値の高さも目立ちます。市販のルーに少しアレンジしている様子が伺えます。また、ホイップクリーム・生クリ―ムもクリームシチュールーと同じぐらい高くなっていますが、こちらは仕上げのトッピングでおしゃれに仕上げているのではないかと思われます。レタスやツナ、ハム、マヨネーズ、ドレッシングといった葉物サラダに使用するものが高くなっていることから、献立としてはハヤシライスと野菜サラダというシンプルなものになっているようです。

◇ビーフシチュールーの入っている買い物カゴからわかること。

最後にビーフシチュールーと一緒に買われやすい商品の一覧もまとめています。

ビーフシチュールーでもきのこは約4割の方に一緒に買われており、比較的マッシュルームや舞茸が高くなっています。他、玉ねぎや人参、ブロッコリーなどがクリームシチュールーと同様に高くなっています。

お肉では牛角切りが約29%の方に一緒に買われており、リフト値は何と81.4と驚異的な高さになっています。牛角切りはカレールーの場合は同時購買点数45、リフト値12.9と、カレーメニューでも高くなっていることから「カレー用牛角切り」として売られていることも多いですが、ハレの日や良い牛肉の場合は「ビーフシチュー用牛角切り」としての販促も良いのではと感じるデータになっています。

牛肉では角切り以外にも、牛すじ・牛ブロック、牛すね肉なども買われやすくなっており、これらはすべて若年層の方に買われやすくなっています。コロナ禍以降、圧力鍋人気がさらに高まってきていることから、こういった部位も人気が出てきているのではないでしょうか。

野菜、お肉以外では、フランスパンのリフト値の高さが目立ちます。クリームシチュールーよりも倍近く一緒に買われやすくなっています。また、サラダはベビーリーフに生ハムやスモークサーモンを使ったちょっとおしゃれな感じになっており、ワインも一緒に買われやすいことからクリームやハヤシよりもハレの日感が強く出てきています。ホイップクリーム・生クリームやコーヒークリームはハヤシ以上に買われやすくなっており、ハレの日にふさわしい見栄えにこだわったビーフシチューが作られていることがわかります。

「その他無関係」の部分は、シチュールーの売られているグロッサリーコーナーに立ち寄ることで一緒に買われやすいものが並んでいますが、クリームシチュールー、ハヤシ・ハッシュドビーフのシチュールーと比較すると、ビーフシチュールーは数値が低くなっています。ビーフシチュールーはハレの日の目的買い要素もあるため、クリームやハヤシのシチュールーを買う時の、普段の買い物感、ストック買い要素、といったことが弱くなっているようです。

クリーム、ハヤシ、ビーフ、それぞれのシチュールーと一緒に買われやすい商品一覧を見ていただきましたが、特に野菜とお肉の同時購買点数の高さが非常に印象的なデータになっていました。こんなにも高い確率で野菜やお肉を買ってくれるのであれば、客単価の高さも納得です。シチュールーをメインにした販促施策は既にされているスーパーも多いと思いますが、クリーム、ハヤシ、ビーフ、それぞれの食シーンや求められているコトを把握して、さらに喜んでもらえる売場づくりをしていきたいと思います。


今回はあったかメニュー定番のシチュー、特にシチュールーに焦点を当てて、お客さまの求めているコトを探ってみました。シチュールーの入っている買い物カゴは、何をしようとしているのかが比較的わかりやすい内容になっており、しっかりとした狙いを持った売場づくりにも活かしやすいのではと感じました。お盆明けからの秋冬に向けた売場づくりのご参考にしていただければ幸いです。

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