2021年今年のお盆もコロナ禍の中で迎えることになってしまいました。ただ、コロナ禍2年目に入ってきて1年目とは少し違ってきている部分もあります。今回は2020年昨年のお盆の状況や、直近の人が多く動くイベントである2021年ゴールデンウィークの状況などから、2021年今年のお盆商戦を予測していきたいと思います。
目次
まずはスーパーマーケット全体の直近までの週別売上げ推移を確認してみます。
スーパーマーケットの売上げは、コロナ禍によって、2020年3月以降前年を上回る売上げを続けてきましたが、ちょうど1年たった2021年3月と4月は前年の特需のあおりで大きく前年割れしてしまいました。しかし、前年割れ期間は2ヶ月で脱出して、直近の状況ではゴールデンウィーク以降は前年並みの数字に戻ってきています。
そして、今回のテーマであるお盆期間についてですが、2020年は前年対比112.3%と大きく売上げを伸ばしました。この大きく伸びた要因については、2020/8/26の既報記事「速報!今年のいつもとは違う「特別な夏」のお盆商戦はどうだった?」にて紹介させていただきました。2020年のお盆では、帰省や旅行が大きく減少したにもかかわらず、スーパーの売上げが前年を大きく超えた背景には図②のようなことがありました。
そして、これらの背景の主役、お盆の売上げアップのけん引役となったのが子育て世帯を中心とした若年層でした。
では、2021年今年のお盆商戦はどのようになっていくのでしょうか?お盆期間と同じく、人が多く動くイベントであるゴールデンウィークの2019年・2020年・2021年の交通機関の利用状況の変化を参考にしてみたいと思います。
図③は航空機、鉄道、高速道路の2019年から3年間のゴールデンウィーク期間の利用状況の変化を表しています。2020年5月のゴールデンウィーク期間は第一次緊急事態宣言下で外出自粛の意識が非常に強く働いていた時期でした。そのため、どうしても移動しなければならない方は、航空機や鉄道などの不特定多数が利用する公共交通機関を避け、自家用車での移動にシフトしていた状況でした。2021年5月のゴールデンウィーク期間も第三次緊急事態宣言下となってしまいましたが、2020年に比べると人出は増えてきており、どの交通機関も利用が伸びてきています。
同じように、お盆期間の交通機関の利用状況の変化を見ていきます。
2020年8月のお盆期間はコロナ禍第2波と重なってしまいましたが、一部の地域ではGoToトラベルが始まっていたことなどもあって、2020年5月のゴールデンウィーク期間からは大きく利用が伸びています。ただ、図④の2020年のお盆期間の航空機・鉄道利用状況と、図③の2021年5月のゴールデンウィーク期間の航空機・鉄道利用状況がほとんど変わらないことが気になります。ちなみに2020~2021年の年末年始の航空10社の輸送実績は-57%、JR旅客6社新幹線・特急輸送人員は-68%と、2020年お盆期間や2021年ゴールデンウィーク期間よりも良い数字となっていますが、やはり似たような数字ではあります。これらの傾向から、航空機・鉄道利用状況については2021年のお盆期間も良くて-50%までにとどまりそうな感じです。ワクチン接種率の増加や、オリンピック開催での雰囲気変化などがプラス方向に変わる要因ですが、まだまだ厳しい状況が予想されます。
こういった状況下での、2021年今年のお盆商戦の強化ポイントについて考えていきたいと思います。
コロナ禍も2年目になって、生鮮惣菜4部門の調子が変わってきています。
コロナ禍当初は生鮮3部門が大きく伸び、惣菜部は前年割れにまで落ち込みましたが、7月丑の日をきっかけに徐々に回復してきて、2020年の暮れには生鮮惣菜4部門の前年比はほぼ並びました。2020/12/25投稿記事「スーパー惣菜部の売上げがコロナ禍以降の不振から回復傾向!背景にあるシーン・求められているコトとは?」でも惣菜部の回復状況について調べてみましたが、高齢層のお客さまが戻ってきていること、手作り疲れもあり夕方のお客さまが増えてきてること、少し高めのプチ贅沢感のある惣菜が売れてきていること、などが回復の要因でした。
2021年今年のお盆商戦での各部門がどうなるかについても、ゴールデンウィークの2019年・2020年・2021年の各部門の売上げ状況を参考にして考えていきます。
図⑥は、ゴールデンウィーク期間のスーパーの各部門の売上げ状況です。2020年は惣菜部以外すべての部門で売上げを伸ばしましたが、2021年は逆にはっきりと伸びているのは惣菜部だけで、他の部門は前年並みか前年割れになっています。
図⑥と同様に、お盆期間のスーパーの各部門の売上げ状況についても見ていきます。
お盆期間の2019年から2020年の変化は、同期間のゴールデンウィークと似ています。そして2020年から2021年の変化予想としては、ゴールデンウィークと同じく、惣菜部がはっきりと伸び、その他の部門は前年並みに落ちつくと思われます。(農産部は野菜の相場次第かもしれませんが…)
伸びると予想する惣菜部門について、ゴールデンウィークの状況をもう少し詳しく調べてみました。
全体を見てのざっくりとしたイメージですが、2020年には大きく落ち込んでいた、「ハレの日」感のある惣菜の伸びが目立ってきているように感じます。と同時に普段食的な惣菜も伸びてきており、手作り疲れの反動も想像できます。2021年今年のお盆商戦についても、2020年よりは団らんニーズやおでかけニーズのお惣菜が伸びてくると思われます。
さらに2021年今年のお盆商戦でのお客さまの年代別での購買状況も、2021年今年のゴールデンウィークでのお客さまの年代別の前年増減から考えてみます。
2020年ゴールデンウィークは30~50代が大きくけん引していたことがわかります。そして2021年ゴールデンウィークは、前年に大きく伸びていたこともあって30~50代は少し減らしましたが、高齢層、特に70代が伸びてきていることがわかります。
図⑩は、2020年お盆期間の年代別売上げ増減です。2021年お盆期間も2021年ゴールデンウィークと同様に、30~50代は少し減少、高齢層は増加、といった傾向になると思われます。
2019年と2020年のお盆期間を分析して、お盆期間に売れる商品・強化すべき商品についてまとめてみました。
スーパーにとって、お盆は年間を通してクリスマス・年末の次に売上げが大きくなる期間のため、生鮮から惣菜や加工食品まで多くの商品が一覧に挙がってきます。
お盆に売れる商品・強化すべき商品一覧では、特に刺身やお寿司、焼肉などが売上げが大きくなる商品です。これらについては、2020年8月26日投稿記事「速報!今年のいつもとは違う「特別な夏」のお盆商戦はどうだった?」に2020年お盆商戦での状況やその背景について記していますのでそちらをご参考にしていただければと思います。
今回は、年間でお盆期間が最も売上げが高くなる果物と、先に述べた2021年今年のお盆商戦の強化ポイントの惣菜についてもう少し深く考えていきたいと思います。
スーパーでの果物の週別売上げ推移を見てみます。
果物が年間で最も良く売れるのはお盆期間となっています。2020年のお盆期間は図④の交通機関利用状況にもあるように、帰省需要が大きく減少しましたが、果物のお盆期間の売上げは前年比124.2%と、スーパー全体の前年比112.3%を10%以上も上回る非常に好調な数字となりました。果物が好調な売上げとなった要因としては、帰省需要は激減したがお供えセットの高齢需要は大きくは減少しなかった、若年層の好む果物で高価格帯需要が旺盛だった、猛暑ですいかやカットすいかなど果物全般が良く売れた、といったことがあるようです。
もう少し細かく、それぞれの果物別に8月の日別の売上げ推移も見てみます。
お盆に特によく売れる果物のトップ3は、ぶどう、梨、桃です。普段はバナナが良く売れているのですが、バナナはお盆期間には山ができていません。
トップのぶどうでは、特に若年層(20~40代)の売上げが前年比140%と大きく伸びました。お盆に限らず、ぶどうは近年、若年層・子育て世帯からの支持を集めてきているのですが、その要因は品種にあります。
図⑭は、ぶどうの品種別の栽培面積の2018年時点のトップ4品種のここ約20年間の推移となっています。巨峰、デラウェア、ピオーネの上位3品種の栽培が減ってきているのに対して、シャインマスカットが急成長してきています。このグラフの勢いからすると、現時点の2021年ではもしかしたらデラウェア、ピオーネを抜いて2位になっている可能性もあります。
上位3品種とシャインマスカットの違いは、その食べやすさです。上位3品種は種があったり、美味しく食べるためには皮むきが必要ですが、シャインマスカットは種なしで皮ごと美味しく食べることができます。この「食べやすさ」という点が、特に若年層・子育て世帯で重視されるため、シャインマスカットが決して安い品種ではないにもかかわらず人気を集め、その結果として供給サイドもシャインマスカットの栽培を増やしてきています。若年層・子育て世帯が果物に求めている「食べやすさ」というポイントをまとめてみました。
図⑮は、子育て世帯で購入されやすい果物、購入されにくい果物を分類して、それぞれの特徴をまとめたものです。包丁が不要で、一口ずつ食べることができる果物が支持される一方で、包丁でのカットが必須だったり、食べかけを保存しにくいものは買われにくい傾向が出ていました。果物は美味しさだけでなく、食べやすさも求められる難しい食材になってきています。
図⑬では、果物を盛り合せたお供えセットもお盆に大きなピークがあります。果物のお盆期間のピークは他のお盆に売れる商品よりも少し前寄りですが、お供えセットはさらに少し早まり、迎え火の前日の8月12日にピークがきています。
果物のお供えセットの価格帯は幅広くなっています。
500円未満の小さいセットから2000円以上の高級セットまで広い購買価格帯で万遍なく購入されています。お供えセットは高齢層のお客さまの購入がメインで、2020年も2019年と似たような構成になっています。
果物のお供えセットには多種多様なニーズがあるようです。お盆期間の果物の購買状況を調べてみて、いくつか販促案を考えてみました。
お供え用の高価格帯の果物は、また他の高価格帯の果物と一緒に買われる傾向があります。一定額以上の購入をされたお客さまに対しては盛りかごサービスなどの提案も良いのではないでしょうか。また、お盆期間にお供えセットを買われる方の内、10人中6~7人はお花も一緒に購入されています。お供え用のお菓子などとの関連販売を強化していくことも必要です。
お盆期間に強化すべき惣菜のひとつに焼鳥惣菜があります。焼鳥惣菜は週単位ではお盆期間に大きな売上げになりますが、コロナ禍で惣菜のバラ販売がなくなったことから、購買価格帯は2019年のお盆と2020年のお盆では大きく変化しています。
2019年では100円未満のバラ販売が普段のメインになっており、お盆期間には100円未満のバラと、500円以上の大バックが大きく伸びていました。しかし2020年ではコロナ禍以降の惣菜バラ販売がなくなったことで、100円未満の売上げはほとんどなくなって代わりに150~300円台の2~4本セットが普段のメインとなり、お盆期間では300~500円以上の中~大パックが大きく伸びる状況になっています。直近2021年6月でもバラ販売はほとんどなく、150~300円台がメインの状況が続いていることから、2021年のお盆も2020年お盆とほぼ同じ状況になると思われます。
図⑱のお盆期間の焼鳥惣菜の購買価格帯の大きな変化は、やはり同様にバラ販売を封じられた天ぷら惣菜でも同様に起こっています。
天ぷら惣菜についても2019年では100円未満のバラ販売が普段のメインとなっており、お盆期間では300~400円以上の大パックが伸びています。2020年では100円未満は大きく減り、普段は250~300円が最も多くなっており、お盆期間では2019年以上に300~400円以上の大パックが大きく伸びました。天ぷら惣菜については直近でも100円未満は少ないままで、普段は300円台のものが最も多くなっていることから、2021年のお盆の天ぷら惣菜は2020年のお盆以上に大パックの売上げが向上するのではないかと思われる流れになっています。
焼鳥惣菜も天ぷら惣菜も、イベント時の伸び方がコロナ禍2年目の方がコロナ禍1年目よりも大きくなってきていることから、2021年今年のお盆も同様の傾向になるのではないでしょうか。
お盆期間に伸びるから揚げ惣菜でもゴールデンウィーク期間の購買状況から、お盆期間の高価格帯の伸びを予測します。
から揚げ惣菜の2019年ゴールデンウィークと2020年ゴールデンウィークの高価格帯はほぼ同じで重なっていますが、2021年ゴールデンウィークは高価格帯が伸びてきていることがわかります。
から揚げ惣菜の2019年お盆期間と2020年お盆期間では高価格帯が減少傾向で中価格帯に寄ったことがわかります。2021年お盆期間は2021年ゴールデンウィークと同様に高価格帯が伸びてくると思われます。昨年に大パックがちょっと売れないと感じたスーパーの方もいらっしゃるかもしれませんが、今年は強気にいって大丈夫ではないかと考えます。
お盆期間に伸びる惣菜で直近の調子の良さが目立つのが冷麦・そうめん惣菜です。
図㉓はスーパーの冷麦・そうめん惣菜の週別売上げ推移です。ちょっとよく理由がわからないのですが、冷麦・そうめん惣菜は2021年4月ぐらいから直近まで前年を上回る好調な流れになっています。
そして冷麦・そうめん惣菜は最高気温に比例して売上げが伸びる商品になっています。2020年昨年は梅雨明けが遅かったため、7月は冷夏で気温が上がり始めるのが8月に入ってからだったのですが、2021年今年は梅雨明けは平年並みのようなので、現在の好調な流れは今後も続くのではないかと感じます。
また、冷麦・そうめんの手作り用の乾麺は、お供え需要もあってお盆期間にさらに大きく伸びます。
2020年のお盆期間は猛暑も重なって大きく伸びました。購買状況を詳しく分析してみると、コロナ禍で子ども家族や孫たちの帰省がなくなったこともあったのかもしれませんが、高齢層のお客さまの普段食としての利用が多かったようです。図⑧のゴールデンウィークに伸びた惣菜一覧でもあるように、直近のイベントでは、いわゆる「ハレの日」感のある惣菜と同時に、普段食の惣菜の両面が伸びてきています。2021年今年のお盆では惣菜が伸びるのは間違いありませんが、華やかな展開だけでなく、手作り疲れのお客さまも取り込んでいけるような普段食のお惣菜も強化していくことが必要です。
今回は2021年今年のお盆商戦について考えてみました。コロナ禍で一躍大きく伸びた手作り需要ですが、手作り疲れなのか、ここにきておかず惣菜やお弁当惣菜の伸びが目立ってきています。今年のお盆商戦はお惣菜の強化と高齢層の取り込みがポイントになると予測して、実際どうなるのかみていきたいと思います。
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