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スーパー畜産部での長年の不振カテゴリーである牛肉…
特に課題だった若年層向けの牛肉消費が今伸びてきている!

スーパー畜産部でのわかりやすい主要カテゴリーは、牛肉・豚肉・鶏肉ですが、これらのカテゴリーは買われやすい年代が異なっています。

図①はスーパーの食品全体の年代別の売上構成比と比較して、左側にずれている豚肉・鶏肉は若年層に買われやすく、右側にずれている牛肉は高齢層に買われやすいということを示しているグラフです。
ただ、もう少し現状を正確に表現すると、確かに豚肉・鶏肉は若年層に買われやすくなっているのですが、牛肉については高齢層に買われやすいと言うよりは、むしろ若年層に買われにくくなっているというのが適切かもしれません。そして若年層に買われにくいカテゴリーというのは将来的には市場が縮小していくことを運命づけられてしまいます。

こちら図②は家庭で使用される牛肉・豚肉・鶏肉の年間使用量を表したグラフです。牛肉の消費量は牛肉輸入自由化(1991年)やバブル景気もあって1995年まで伸びていましたが、O-157食中毒(1996年)・日本でBSE発生(2001年)・アメリカでBSE発生(2003年)と立て続けの逆風にさらされて1995年からの10年間で大きく数字を落とし、以降、回復することなくじわじわと減少を続けています。

牛肉が売れない理由として、よく言われるのは「高いから」ですが、単に価格だけが問題ではなくなりつつあります。最初は「高いから」と言う理由だけで食卓にあまりあがっていなかったのが、子ども時代をあまり牛肉が出てこない家庭で育った方が親になると、さらに牛肉を使ったメニューを出さない傾向が出てきてしまい、牛肉の食経験が乏しい生活者がどんどんと多くなってきます。食経験が乏しいと、「価格」だけの問題だったのが、「嗜好」の問題へと拡大してきてしまいます。実際、若者や子どもを対象にした好きなお肉ランキングでは、牛肉が豚肉や鶏肉に負けている結果が頻繁に出てきています。
また、「嗜好」の問題に拡大してきた場合のもうひとつの弊害が、牛肉が贅沢品として特別なごちそうメニューに祭り上げられてしまうことです。特別なごちそうメニューとして意識されるようになると、土日祝日の購買に特化してきてしまい、平日の売上は減少していきます。(図③)

食卓に登場するメニューという視点から見ても、土日祝日に出やすい焼肉やステーキでの牛肉需要は増えているのですが、一方、平日メニューの肉野菜炒めやカレーライスでは豚肉や鶏肉が優先的に使用されるようになって牛肉が使用される機会がどんどんと減ってきてしまっています。年間を通して考えると、平日の日数は土日祝日の2倍あるため、平日の購買が減る影響は大きく、少しぐらいの土日祝日の売上アップではカバーしきれなくなります。

こういった背景から考えると、牛肉の消費回復のための課題としては、若年層に牛肉の美味しさをしっかりとアピールしていくこと、そして平日メニューとして普段使いしてもらえるような牛肉メニューを広めていくこと、の大きく2点があげられるのではないでしょうか。

新型コロナウイルス騒動以降、スーパーにおいては内食増加、手作り料理需要の増加に合わせて、お肉の売上アップは目立ってきており、豚肉・鶏肉ほどの上昇率ではありませんが、牛肉も伸びてきています。そしてこの牛肉の伸びをけん引しているのが若年層となっています。

高齢層はコロナ禍以降も前年と同じぐらいの推移ですが、若年層では、3月中旬ごろから平日、土日ともに力強く伸びていっています。(図④、⑤)
今回はこの中でも特に若年層の平日メニューから、牛肉販促策を考えていってみます。

●若年層の平日メニューはハヤシライスとプルコギが狙い目!

牛肉を若年層の平日購買につなげるのに注目するひとつめのメニューはハヤシライスです。
「ハヤシライス?いやいや、ハヤシライスよりはカレーライスの方が重要でしょ?」
確かに、カレーライスの方が食卓登場は多いのですが、牛肉を若年層に売る目的での訴求メニュー、という点においては実はあまりカレーライスは効果的ではないのです。カレールーとどの肉を一緒に買っているか?を調べてみると、若年層は牛肉よりは豚肉・鶏肉と一緒にカレールーを買っていることがわかります。 (図⑥)

先述した通り、カレーライスに豚肉や鶏肉が使われるようになってきて牛肉の使用が減ってきているのですが、この傾向は若年層ほど強く出てきています。

一方、ハヤシライスと牛肉を一緒に買っている年代を調べて図⑥に重ね合せてみると、

ご覧の図⑦のように、40代に鋭いピークが出る若年層に強く寄った売上構成となっており、若年層への牛肉販促にはハヤシライスのメニュー訴求が効果的であることがわかります。若年層ではハヤシライスは土日祝日よりは平日に食卓に登場しやすいメニューになっていることからも、牛肉の若年層への平日購買を促進するという点においてもぴったりです。ハヤシライスの素と牛もも薄切り肉が一緒に買われやすい傾向があるようなので、売場からのメニュー訴求、ハヤシライスの素の関連販売で、平日の若年層に向けた牛肉販促として効果が出るのではないでしょうか。

もうひとつの、牛肉を若年層の平日購買につなげるのに注目するメニューはプルコギです。
「プルコギ?人気とは聞くけど、普通に焼肉でいいんじゃない?」
もちろん、焼肉の訴求、焼肉のたれの同時販売は普通に重要ですが、ことに平日のメニュー訴求という点では実はプルコギも狙い目になってきているのです。

売上規模ではもちろん焼肉のたれカテゴリー全体の大きさにはかないませんが、プルコギのたれ商品群の、牛肉との買われやすさを平日と休日にわけて見てみると、平日には焼肉のたれ以上に牛肉と一緒に買われやすくなってきていることがわかります。(図⑧)

平日にプルコギが注目されやすくなる理由としては、
・メニューバリエーションが多くアレンジしやすい。
・普段メニューのトッピングとして使いやすい。マンネリになりがちな主食に変化をつけられる。
・冷蔵庫の残り物を使いやすい。特に野菜を使いやすく、野菜摂取不足対策にもなる。
といったコトがあげられます。

プルコギはまさに今、休校や在宅勤務が長期化してきて、家食でのメニューづくり、献立づくりに困ってきている生活者にぴったりの問題解決メニューにもなってきているのではないでしょうか。 ハヤシライスやプルコギ以外にも、普段から手軽に牛肉の美味しさを楽しめるメニューを広げていくことで、若年層や子どもへの牛肉需要の拡大につなげていきたいと思います。


今回は牛肉に特化したお話になりましたが、豚肉・鶏肉についてもこの1~2ヶ月で特徴的な面白い動きも出てきています。その背景にある生活者が今求めているコト、生活者により喜んでいただける商品づくり売場づくり提案についての記事を作成していきますので、楽しみにお待ちくださいね。


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