2021年の節分の日は37年ぶりに2月3日から移動します。おそらく多くのマスメディアでも取り上げられるでしょうから、節分の日を意識する生活者が増えることが予想されます。さらにコロナ禍以降、いろいろなイベント日において、おうち時間をより楽しめるような商品の消費が好調に推移しています。節分の日はスーパーにとっても大きな売上げとなる重要なイベントですが、お客様にさらに喜んでもらえるような商品づくり、売場づくりを今回は考えていきたいと思います。
目次
「節分の日」とは字からも想像できるように、「季節を分ける区切りの日」を意味しており、現在では特に冬と春の区切り、つまりは「立春」の前日を意味する言葉になっているようです。この立春が1985~2020年までは2月4日だったのが、2021年は2月3日になるので、節分の日も2月3日から2月2日になるということです。
ちなみに2022年から3年間の節分の日はまた2月3日に戻ります。これからしばらく(2057年まで)は4年に1回、2月2日が節分の日になるようです。注意が必要ですね。
節分の日は、スーパーにとって、特に惣菜部にとっては極めて重要な売上げの大きくなるイベントです。 (注意:本記事で使用しているデータベースでは、例えば実際の売場では畜産部で売られているから揚げなどのミートデリカや、水産部で売られている寿司など、いわゆる「惣菜・弁当」はすべて惣菜部の売上げとして計上されていますのでご了承ください。)
図②のスーパー惣菜部の週単位の売上げを表したグラフでは、クリスマス・年末週、お盆、丑の日、に次ぐ大きな売上げとなっていることがわかります。
さらに図③ではスーパー惣菜部の日別単位の売上げを示したものですが、単日では大晦日をも上回る年間で最も大きな売上げとなっており、節分の日の瞬間最大風速的なすごさが良くわかります。でもこんなにも瞬間的に売上が大きく上がってしまうと、お店側、売場サイドからすると、いろいろととても大変です。しっかりと内容を把握して、対策を考えていく必要があります。節分の日に注目すべき商品にはどのようなものがあるのでしょうか?
図④は節分の日に売上げが大きく跳ねる商品の一覧です。ピンク色に網掛けしている商品は節分の日単日の売上げが年間1~3位を2年連続で獲得している特に重要な商品です。惣菜巻物以外にも年間1~3位を獲っている商品・カテゴリーがこんなにもたくさんあるのは驚きです。また、メニュー軸・献立軸で見ると、手作り寿司の材料、おかず惣菜、が多く挙がっているのも特徴です。節分の日の食卓は、何を手作りしているのか?、何を惣菜や即席商品で賄っているのか?といった調理の段階を理解しておくのも売場づくりのためには必要なことがわかります。今回は、惣菜巻物を中心としたお寿司、そしておかずや汁物のサイドメニュー、それぞれについて現状分析と対策について考えていきたいと思います。
節分の日の最重要商品は、やはり恵方巻。惣菜巻物の売上げを見てみます。
図⑤は惣菜巻物の週単位の売上げを表していますが、大晦日やお盆のピークが小さく見えるぐらい、節分の日の売上げボリュームは圧倒的です。ちなみに大晦日は巻物よりはにぎり寿司が主役のイベントですが、にぎり寿司の売上げを全部足しても節分の日にはかないません。
図⑥は日別の節分の日前後の惣菜巻物の売上げ推移ですが、2月3日のみに鋭いピークが立っており、単日イベントであることがわかります。 このように節分の日の惣菜巻物は大変大きな売上げとなりますが、節分の日にスーパーに来ていただいているお客様の内、どれぐらいの方が惣菜巻物を購入していただいているのでしょうか?
何と驚きの42%!節分の日にスーパーに来ていただいているお客様の10人に4人以上が惣菜巻物を購入されていることになります。年代別では、高齢になるほど買われやすい傾向が出ています。
この42%という数字を他のイベント日と比較してみます。
「丑の日」は当日にうなぎ蒲焼かうな重・うな丼を購入した割合、「クリスマス」はローストチキンかフライドチキンを、「大晦日」は天ぷら惣菜を購入した割合となっています。丑の日の4人に1人がうなぎを買っている、大晦日の5人に1人が天ぷらを買っている、というのも、なかなかに高い割合ですが、節分の日の10人に4人が惣菜巻物を買っている、というのがさらに飛び抜けて高い割合であることがわかります。
惣菜巻物の売上げ金額の高さ、来店客に占める購入割合の高さ、の背景についてさらに調べてみます。
来店客に占める購入割合が高くなっている理由は、高齢層の普段からの購入率の高さに加えて、若年層が普段よりも購入するようになることが背景にあります。
黄色の面グラフは惣菜巻物の年間平均での年代別の購買金額の構成比について表しており、節分の日の構成比と比較しています。ご覧のように基本的に惣菜巻物は高齢層の普段の主食としての利用が多くなっているのですが、節分の日は若年層の割合が普段よりも高くなっています。若年層の購入が普段よりもグイッと増えることが、来店客に占める購入割合が高くなっている理由のひとつです。 そして惣菜巻物の売上げ金額が高くなっている理由は、価格帯が普段とは全く異なっていることです。
普段は400円未満の商品で約7割の売上げを占めていますが、節分の日は400円未満は2割もなく、逆に400円以上の商品で8割以上を占めています。恵方巻も海鮮系と田舎巻で価格帯は異なりますが、ざっくりとした価格帯別の商品としては、300円台・400円台のハーフ、600円台~900円台ぐらいの1本もの、900円台以上のセットもの、があり、節分の日はこれらの恵方巻が売上げを大きく押し上げています。また、若年層は比較的単価の高い海鮮系を、高齢層は比較的単価の低い田舎巻を購入する傾向があるためか、結果として若年層の方が高価格帯の商品を購入する傾向となっており、普段よりも購入者が増える若年層による価格押上げ効果も出ているようです。
節分の日の恵方巻、お寿司需要では、惣菜だけでなく手作りも選択肢のひとつとなってきます。手作り寿司の必須商品となる海苔の売上げについて見てみます。
海苔の売上げは、惣菜巻物と違い、節分の日当日だけでなく、2日前の2月1日から売上げが上昇し始めています。節分の日にお寿司を食卓に並べる世帯において、惣菜利用と手作りはどれぐらいの比率になっているのでしょうか?図⑦の来店客の内、惣菜巻物を購入した割合のグラフに、海苔を購入した割合も足してみました。
惣菜巻物の購入割合は「2月3日に購入した客数/2月3日の来店客数」ですが、海苔は2月1日から売上げが向上してきているため、海苔の購入割合は「2月1~3日に購入した客数/2月3日の来店客数」にしています。こうすることにより、2月3日に手作りをする方、惣菜を利用する方の割合比較ができるのではないかと考えています。来店客に占める惣菜巻物の購入割合は42%もありましたが、海苔も10%あり、節分の日にお寿司を食卓に並べる世帯において、惣菜利用と手作りの比率はおおよそ4:1となっており、手作り需要も結構あることがわかります。特に30~40代では15%と目立って多くなっており、子育て世帯での手作り寿司需要が大きくなっています。
惣菜巻物と海苔の購買金額の年代別構成比でも、惣菜利用と手作りの年代別の特徴について表してみました。惣菜利用は食品全体の売上げ構成とあまり変わらない、つまり全年代に平均的に購入されているということがわかります。一方、海苔は30~40代に大きなピークが出来ており、購買金額においても子育て世帯の売上げが多くを占めています。
では、この節分の日の手作り寿司は家庭ではどのようなお寿司が作られているのでしょうか?節分の日に買われている海苔の種類について調べてみました。
普段は食卓用海苔が半分を占めていますが、節分の日は全形海苔と手巻き用海苔が大きく伸びていることがわかります。手巻き用海苔も意外と大きい割合を占めており、巻き寿司ではなく、手巻き寿司で節分を楽しんでいる世帯も多いようです。
手作り寿司が若年層寄りなので、全形海苔も手巻き用海苔もどちらも若年に寄っていますが、手巻き用海苔の方がより強く30~40代にピークが出ており、子どもが小さい子育て世帯ほど手作り手巻き寿司が食卓に登場しているようです。 手作り寿司のネタの方では寿司種セットに注目です。
寿司種セットの売上げは、2月2日から上昇し始めて、2月3日に大きなピークとなっています。2020年は2019年よりも小さなピークとなっていますが、2021年は逆にニーズが高まるのではないかと予測します。コロナ禍以降、内食の増加に合わせるように、イベント時の寿司種セットの売上げが好調になってきているためです。
コロナ禍前の、節分の日、ひな祭りは前年割れでしたが、コロナ禍以降の子どもの日、父の日、お盆では前年を超える流れとなってきています。今度の節分の日の手作り寿司需要は大きく期待ができると思われます。 その他、図④でも一覧にしたように、多くの寿司ネタ材料が買われますが、手作り割合の高い若年層では面白い動きも出ています。既報記事「スーパー水産部で大きな売上を占める「お刺身」。コロナ禍をきっかけに利用が伸びてきている若年層を取り込むポイントは?」でも紹介したように、若年層はサーモン好きなのですが、節分の日にはまぐろを買うようになります。
点線が年間平均でのまぐろ冊と本まぐろ冊の年代別売上げ構成比ですが、どちらも70代ピークで、普段は高齢層に買われていることを示しています。しかし実線の節分の日には70代のピークとは別に、40代にもピークが出来ており、節分の日に若年層がまぐろを買うようになることを表しています。この傾向は特に本まぐろでより強く出ており、イベント日にはお金を使ってくれる若年層の購買実態が裏付けられているようです。コロナ禍以降、和牛や本まぐろなどの高級素材が売れるようになってきていることからも、今度の節分では、ちょっと値は張るけれども美味しさを前面に出したネタのアピールも重要そうです。
手作り寿司の関連商品は非常に多く、ひとつひとつに背景がありますが、ちょっと今回の記事ではキリがないので、最後に、おうち時間を楽しく過ごせる寿司種セットの提案でまとめにしたいと思います。
王道の海鮮セットは、手巻き用海苔と一緒に買われる商品データからの組み合わせ案です。まぐろとサーモンは冊のままなのがポイントです。手巻き寿司では、きゅうりが必須なため、準備に包丁が必要となります。そのため、刺身よりは自分の好きなようにカットできる冊の方が一緒に買われやすくなっています。いくらとまぐろたたきが一緒に買われやすいのは、子どもが好きなネタだからでしょう。
田舎巻セットは売られているのは見たことがありませんが、寿司種セットと惣菜の田舎巻が一緒に買われている買い物カゴが意外と多いことからの提案です。海鮮巻よりも材料をそろえにくい田舎巻のネタを一緒にしておいてあげれば、手作り派のお助け商品になるのではないでしょうか。 その他、小さい子どもが大好きなツナマヨ・コーンマヨセット、検索頻度が向上し続けている韓国料理をイメージしたユッケ風の、まぐろ・アボカドセット、などもいかがでしょうか。家族が楽しく盛り上がれるような手作り用の寿司種セットを考えていきたいと思います。
節分の日の最も代表的なおかずメニューは、やはり「いわし」です。魔除けの柊鰯、無病息災の節分いわし、といった風習から、節分の日には、いわし商品が大きなピークを築きます。
生いわし・塩いわし・いわし丸干し、どの商品も節分の日に大きな売上げとなっています。特に塩いわしは年間を通して、ほぼ節分の日だけに売れる商品です。いわしの食べられ方としては塩焼きが最も多いのですが、図④の節分の日に売れるもの一覧であるように梅肉も伸びていることから、いわしの香梅煮などでも食べられているようです。図⑳は全国のスーパーマーケットの平均データですが、節分の風習は地域差が大きいため、その地域に合った品ぞろえになるようにご注意ください。以前、節分の日に関西のスーパーを見た時に、水産売場に千葉県・銚子港産の丸々と太った脂ののった生いわしが大量に並べられていたのを見て、関東のスーパーではあまり見ない売場だったのでびっくりしたことがあります。
ただ、この節分にいわしを食べる習慣は、近い将来には大きくすたれていく可能性もあります。
図㉑は年代別の売上げ構成比を見たグラフですが、生いわし・塩いわし・いわし丸干し、どれも70代をピークに大きく高齢層に売上げが偏っており、60代以上で売上げの約3/4を占めるほどになっています。一方、50代以下では食品全体の売上げ構成比から大きく下回っており、若年層にはいわしを食べる習慣がなくなりつつあることを示しています。
若年層に対しては、いわしを調理の手間いらずですぐに食べることのできる、惣菜での提案がおすすめです。
いわしを焼魚惣菜で提供すると、ちょっとだけ高齢層への過度な偏重が修正されます。さらに、いわしフライ惣菜や、いわしから揚げ惣菜にすると、どの年代にも万遍なく購入してもらえるようになってきます。ただ、図㉒の「から揚げ惣菜」には肉のから揚げも混じっており、30~40代では節分の日に鶏のから揚げをお寿司と一緒に並べる食卓が増えてきているようです。以前、節分の日に鶏のから揚げ惣菜を大々的にやっていきましょう!という食未来研究室からの提案をそのままやっていただいたスーパーでは、鶏のから揚げ惣菜が大きく売上げを伸ばして、残念ながら前年割れしてしまった巻物惣菜の売上げ減少をカバーできたと喜んでいただいたこともありました。
節分の日に欠かせないサイドメニューには汁物もあります。まだまだ寒い2月の冷たいお寿司には、温かい汁物が必要です。即席味噌汁は年間を通じて比較的安定した売上げになっている商品ですが、2019年・2020年どちらでも2月3日が売上げ年間1位の日となっています。
節分の日に買われる、即席味噌汁にも年代での好みの違いがあります。
貝汁が最も高齢寄り、お吸い物が最も若年寄り、豚汁・けんちん汁や普通もお味噌汁がその中間といった感じです。節分の日には特に若年層が即席味噌汁を買い求め、お吸い物系の商品は普段の6倍以上の売上げとなるので、手厚い品ぞろえをしていきましょう。
その他、やはり2019年・2020年どちらでも2月3日が年間1位の売上げとなるレトルト茶碗蒸しや、旧暦の年越しそばに当たる節分そば、そしてもちろん豆まき関連商品、などサイドメニューの方もたくさんありますが、今回はこういったサイドメニューも含めた、年代別や、寿司の手作りか?惣菜利用か?別の節分の日の食卓、献立を本記事の締めくくりとさせていただきます。
まずは若年層の手作り寿司派です。お寿司は太巻きか手巻き寿司ですが、子どもが小さいほど手巻き寿司が作られているようです。記事中にも載せたように、インスタントのお吸い物が一緒に良く買われており、豆菓子も必須です。
若年層の惣菜寿司派では、お寿司は海鮮巻が選ばれており、おかずにも惣菜の鶏から揚げが良く利用されています。汁物ぐらいは手作りでということでしょうか。野菜水煮ミックスを利用した簡便手作りの豚汁も食卓に登場します。
中年層では、惣菜巻物の利用が海鮮系と田舎巻に分かれてきます。一緒に食べる温かいサイドメニューには節分そばが良く登場し、惣菜のいわし天ぷらをトッピングに利用しています。
高齢層では最も伝統的でオーソドックスなザ・節分の食卓となっています。惣菜巻物の利用では田舎巻が多くなり、いわしの塩焼き、レトルトの茶わん蒸しがサイドを固めます。豆ではなく地域性の強い落花生になるのも特徴です。 図㉔では、それぞれのお客様のシンボリックな節分の日の食卓をまとめてみました。こういったターゲット別の食卓イメージと図④の節分の日に良く売れるもの一覧表から、節分の日のおうち時間をより楽しく過ごせるような売場づくりを考えていくご参考にしていただればと思います。
今回は過去の節分の日の売上げデータや、コロナ禍以降の消費動向などから、2021年2月2日の節分の日への対策を考えてみました。過去に本ホームページで取り上げたイベント、お盆やハロウィン、ボジョレーヌーボー解禁、などにおいて、どのイベントでも好調な売上げとなってきており、節分の日も期待できるのではないでしょうか。ポイントはおうち時間を楽しめる提案。笑顔で購入してもらえる商品づくり・売場づくりをしていきましょう。
記事についてのお問合せはこちらから
記事・データの商用目的での使用はご遠慮ください。