かぼちゃのイベント、と聞くと皆さんは何を思い浮かべますか?近年のメディア露出や商品展開の多さから、ハロウィンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。スーパー業界の方にとっては当たり前のことかもしれませんが、かぼちゃにはハロウィン以上に注目すべき日があります。それは「冬至」です。
冬至の日に栄養価の高いかぼちゃを食べると、風邪をひかない、長生きする、という言い伝えがあります。また、ゆず湯に入って邪気を払い、あたたまる習慣もあります。 当ホームページでも再三取り上げていますが、コロナ禍が続く現在、家での時間をいかに充実させるか、ということがキーワードとなっています。今回は、おうち時間を彩るイベントとなりうる「冬至」について取り上げたいと思います。
目次
まず、冬至とはどういった日なのでしょうか。冬至は1年を24の季節にわけた「二十四節気(にじゅうしせっき)」のひとつで、北半球では1年で1番太陽が出ている時間が短く、夜が長い日です。二十四節気ときくとあまりなじみがないように感じますが、冬至のほかには立春や春分、夏至、秋分などもこのひとつにあたります。二十四節気は日にちではなく、地球から見た太陽の位置によって定められているため、冬至は年によって若干日にちがずれてきます。では、今年の冬至はいつなのでしょうか。
今年の冬至は12月21日(月)です。年によって冬至の日が変わるとは言え、冬至は22日というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。近年では、1956年から1991年までの間は毎年22日でしたが、1992年から2027年までの間は4で割り切れる年が21日となり、その他の年は22日となります。今年、2020年は4で割り切れる年となりますので21日となり、注意が必要です。
では、そんな冬至の日に食べられる、かぼちゃについて見ていきましょう。
まずは、かぼちゃの売上推移をみてみます。
ハロウィンよりも圧倒的に大きな山が12月の中旬~末頃にかけてあることに気づきます。さらに日別に拡大してみてみます。
こちらは2019年のデータですが、12月20日頃から伸び始め、22日の冬至をピークに山ができています。冬至の日には年間平均の約4倍もかぼちゃが売れています。
冬至は昔からある安定したイベント、といった印象ですが、ここ数年間のかぼちゃの支出金額はどのようになっているのでしょうか。
2016年以降、かぼちゃの支出金額は減ってきてしまっています。これだけ見ると、冬至にかぼちゃを食べる習慣が減ってきてしまっているのかなと感じますが、それぞれの年の冬至の曜日を見てみますと、2017年は金曜日、2018年は土曜日、2019年は日曜日となっています。週末はクリスマスパーティーを開く方も多く、過去三年間は少しクリスマス需要の売場とのバランスが難しかったかもしれません。しかし、今年は平日で、冬至が今回と同じ月曜日だった2014年は近年で最もかぼちゃへの支出が高くなっています。また、クリスマスは後ろ倒しの傾向(既報記事「どうなるどうするクリスマス年末年始商戦!その①~「クリスマス年末年始の過ごし方」アンケートを分析!~」参照)ですので、今年は巻き返すチャンスです。
では、どのような方が冬至にかぼちゃを食べているのでしょうか。
かぼちゃは普段から比較的高齢層に買われやすいですが、冬至の日には50-60代により買われやすくなります。 冬至のイベントをさらに盛り上げていくには、30代、40代といった 若年層へのアピールが課題となります。
このかぼちゃですが、売場では丸ごとや1/2、1/4カットのかぼちゃと、煮物用や天ぷら用にすぐに使えるようにカットされた、用途別のカットかぼちゃ、2つのパターンがあります。
それぞれの売上ボリュームをみてみると、普段の売上割合は15%ほどしかないカットかぼちゃが、冬至期間に限ってみると、全かぼちゃの売上の1/4を占めています。用途別では天ぷら用のスライスかぼちゃより煮物用のブロックかぼちゃの方が冬至期間には買われやすくなっていますので、冬至期間には普段以上に煮物用のブロックかぼちゃをしっかりと並べることが大切です。
また、2018年の冬至後から、2019年の冬至期間前までの1年間で、一度もかぼちゃやカットかぼちゃを購入したことがなかった方が2019年の冬至期間にカットかぼちゃを購入した割合は24%と、カットかぼちゃ購入者の約1/4を占めています。カットかぼちゃは普段かぼちゃを購入しない方にも購入してもらいやすくなっており、かぼちゃ入門編といった位置づけにもなります。そういった、あまりかぼちゃになじみのない方に向けて、カットかぼちゃの売り込みと合わせて、売場から積極的にメニュー提案をしていく必要があります。
では、かぼちゃはどういったメニューで食べられているのでしょうか。一緒に買われているものをみてみました。
一緒に買われやすいもののうち、かぼちゃメニューに結びつきそうなものを取り出してみました。
かぼちゃと一緒にあんが買われているのは、いとこ煮をしていると思われます。地域によってなじみがあったりなかったりするかもしれませんが、普段から食べているかぼちゃの煮物だけでなく、冬至ならではのメニューとして、ブロックかぼちゃの横にゆであずきを併売し、いとこ煮を訴求してみてはいかがでしょうか。また、あん以外には根菜類も一緒に買われやすくなっています。冬至には「ん」のつく食べ物を食べると運気が上がると言われており、その中でもかぼちゃ(なんきん)や蓮根、人参、うどん(うんどん)は「ん」が2つついているために、運気が2倍になる「冬至の七種」と呼ばれています。そういったいわれの紹介とともに、スライスかぼちゃの横に水煮の豚汁用野菜や蓮根スライスを並べ、簡単にできる主食メニューとしてかぼちゃうどんを提案することで、冬至にかぼちゃを食べる習慣の薄い若い世代の方にも挑戦してもらいやすくなるかと思います。
手作り派のかぼちゃの購入について見てきましたが、惣菜はどのような動きをしているのでしょうか。
こちらは2019年12月の和風煮物惣菜の売上です。最も売上が伸びるのは年末ですが、22日の冬至にも山ができており、年間で2番目に売上が高くなっています。続いて、冬至における和風煮物惣菜の購買層も見てみました。
普段の和風煮物惣菜の購買層と比較すると、40-60代が高くなっています。
青果での販促と同じように、惣菜でも、普段売っているかぼちゃの煮物にゆであずきをトッピングしたいとこ煮を中心に、若い世代にも買ってもらえるかぼちゃサラダやかぼちゃコロッケなどを販売し、惣菜売場全体で「冬至」をアピールすることが大切です。
冬至のもう一つの主役、ゆずについても調べてみました。
ゆずはかぼちゃ以上に冬至の売上の山が強く出ています。 2020年ゆずの季節終わりの部分で盛り上がりをみせているのは、コロナ禍での手作り需要や鍋需要の高まりが原因でしょうか。
ゆずの冬至の日単日での売上は年間平均のおよそ46倍にも達しており、20~22日の3日間の売上は年間売上の約1/3を占めています。ゆずにとって冬至はまさに勝負の日です。
では、ゆずはどのような方に買われているのでしょうか。
普段ゆずを購入しているのは高齢の方が多いのに対し、冬至の日には30-50代の子育て層の購入が増えます。子育て世帯のイベントに求めることとしては、「子どもと一緒に楽しめる」というのがひとつのポイントとなってきますが、冬至におけるゆず湯は子どもと一緒に楽しむのにうってつけです。また、このコロナ禍においては今まで以上に、家で楽しめる、というのがポイントとなっています。家でお風呂を楽しむための、入浴剤の売上がどのように推移しているのか、株式会社True Data様のEagle Eyeを使用させていただき、ドラッグストアでのデータを調べてみました。
3月末までは前年を少し下回るくらいで推移していたのが、4月以降は前年を大きく上回っています。昨年の9月末、10月頭は消費税増税で少しイレギュラーな動きをしていますが、現在も好調に推移しており、これから寒くなる冬本番に向けて、ますます需要が高まっていくことが予測されます。
コロナ禍においては、「本格志向」もキーワードとなっており、今年の冬至は入浴剤のゆず湯ではなく、本物のゆずを用いて、より本格的に楽しもうという提案が、生活者に受け入れられやすくなっていると思います。
売場からの具体的な提案としては、少量でもゆずの香りが楽しめるように、カットしたゆずをいれてお風呂に浮かべる用の袋をゆずの隣に並べ、自由に持って帰れるようにしたり、味覚でも楽しめるように、お風呂にいれる前に夕食で少量のゆずの皮や果汁を使うレシピを提供したり、といったことが考えられます。 また、かぼちゃや和風煮物惣菜とゆずが一緒に買われやすいというデータも出ています。
かぼちゃとゆず湯の両方を楽しみやすいように、それぞれの売場の近くにゆずを並べ、両方買うと少しお買得になるバンドル販売を行うと、より多くの方に冬至のゆず湯を楽しんでいただけると思います。
今回は冬至の消費について考えてみました。冬至はクリスマス年末年始という大きなイベントに押され気味ですが、今年は、曜日回りやコロナ禍の状況から、売り方次第で例年以上の需要が期待できます。今まで冬至に何もしてこなかった方にも楽しんでいただけるように、売場からしっかりと情報発信していきましょう。
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