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新型コロナウイルスの拡大開始から丸3年。スーパーの売上はどう変化した?③【畜産編】

GWは航空会社によると国内線ではコロナ禍前越えの利用状況、鉄道各社でも同様の状況と発表されており、世の中はさらにコロナ禍前に戻りつつあります。このような状況の中、スーパーの状況はどうなっているのでしょうか?今回は畜産部について見ていきたいと思います。

※以前の記事はこちら
新型コロナウイルスの拡大開始から丸3年。スーパーの売上はどう変化した?①【全体の変化と農産編】
新型コロナウイルスの拡大開始から丸3年。スーパーの売上はどう変化した?②【水産編】


目次

●スーパー畜産部全体の状況

まずは、畜産部全体の売上状況について見てみたいと思います。

こちらはスーパー畜産部の月別売上推移です。年末やお盆の時期に大きな売上の山がみられます。また、より分かりやすく売上の変動をみるために季節性をなくして見ることの出来る12か月移動平均値もとっています。こちらの見方としては、例えば2019年12月の点線の値は2019年1月~12月の1年間の平均値、2020年1月の値は2019年2月~2020年1月の1年間の平均値というように、1か月ずつ移動させながら12か月の平均値をとったものになります。コロナ禍で売上が増加したのちピークアウトしてきていましたが、直近では横ばい~微増の傾向がみられます。

この傾向は他の部門でも同様なのでしょうか?

図②は生鮮3部門と惣菜部の売上指数推移です。変化を分かりやすくするために12か月移動平均をとり、2019年1年間の平均値を1としたときの指数変化で比較しています。最も好調な惣菜部は現在でもコロナ禍前を大きく上回った値で推移していますが、農産部、水産部については畜産部とは違い直近では減少傾向となってしまっています。現在、生鮮3部門の中では畜産部が一番好調な動きをしているようです。

それでは、畜産部の動向についてもう少し細かく見ていきたいと思います。

図③は畜種別の月別売上推移です。特に牛肉において売上の減少が見られます。

また、畜種別の推移についても2019年1年間の値を1とした時の指数変化で伸び具合を見てみました。牛肉やウインナーなどの加工肉が不調な中、鶏肉、ひき肉、豚肉はコロナ禍前以上の売上を維持しています。その中でも鶏肉、ひき肉については直近で増加傾向もみられます。どの畜種も物価は上昇していますが、比較的利用しやすい価格帯である鶏肉とひき肉は需要が高まっているようです。

今回はこの鶏肉とひき肉についてもう少し詳しく調べていきたいと思います。

●鶏肉の狙い目は?

まず初めに鶏肉について見ていきます。

こちらは鶏肉の種類別の月別売上推移です。もも肉やむね肉を含む鶏正肉が最も売上が大きく、直近では横ばい傾向となっています。

指数での変化を見てみると図⑥のような動きとなっていました。鶏正肉などに比べると売上ボリュームは小さいですが、鶏骨付き肉(丸鶏、チキンレッグ、サイミート、ぶつ切りなど)や鶏手羽が直近で特に売上が伸びてきている事分かります。図⑤で見られるように鶏骨付き肉はクリスマスの影響で12月に大きな売上の山がありますが、その他の月でも売上を伸ばしてきています。

この鶏骨付き肉や鶏手羽に関連して、「骨付き」というキーワードの検索数を見てみました。

骨付きは「骨付き肉」「骨付きもも肉」「骨付き鶏」といったワードで検索されることが多く、鶏骨付き肉と同様にクリスマスのある12月に大きく関心が高まります。しかし、その他の月においてもコロナ禍以降関心が高まっており、直近においても検索数の増加がみられます。骨付きのお肉は旨味が多くておいしいイメージがあったり、見た目も骨なしのお肉に比べてインパクトがあったりする事などから関心が高まっているのでしょうか。骨付きのお肉は売上、検索数ともに増加してきており注目したい品目の一つです。ちなみに、豚スペアリブも鶏手羽と類似した好調な動きとなっていました。

今回は年間で売上の変動が少ない鶏手羽について、どのような訴求をしていけばいいのか考えてみたいと思います。

まずは、鶏手羽の種類別の検索数推移です。どの種類も検索数は増加傾向にありますが、特に手羽元の検索数が伸びていることが分かります。また、レシピサイトにおいても手羽元のレシピ数が圧倒的に多く、手作りにおいて需要が高いことが伺えます。手羽の中でも、ボリュームがあり、食べやすさや汎用性もある手羽元は特に強化していきたい品目です

次に、鶏手羽がどのようなメニューに使われているかを見てみます。

鶏手羽と一緒に買われやすいものを見てみると、年間を通して買われやすいもの、季節によって買われやすいものがありました。年間を通して買われやすいものの一つとしてはから揚げ粉や片栗粉が挙げられます。から揚げは鶏もも肉や鶏むね肉を利用することが多いとは思いますが、鶏手羽もチャンスのある素材です。
また、春~夏はカレールーやエスニック調味料と一緒に購入されやすくなっていました。カレールーの中では、特にスープカレーの素が利用されやすくなっています。このスープカレーはスーパーの売上が増加している品目の一つです。これからの季節は、鶏手羽と一緒にスープカレーの素の関連販売をおこなってみてはいかがでしょうか。
秋~冬にかけてはおでん関連品や鍋関連品と一緒に買われやすくなっています。おでんについては、年々鶏手羽の利用率が上がっているので販促メニューとして特にチャンスがあると考えられます。

●ひき肉の狙い目は?

次に、ひき肉についてです。

こちらは、ひき肉の種類別の月別売上推移です。最も売上の大きい合いびき肉は減少傾向となっています。

また、指数推移を見てみると合いびき肉が2019年と同等の売上に落ち着いてきている中、豚ひき肉と鶏ひき肉は直近では上昇傾向と好調な動きとなっています。ひき肉では好調かつ売上も大きい豚ひき肉について詳しく見ていきます。

豚ひき肉の売上推移を平日・休日別にみてみると、休日も伸びてはいますが平日での伸びが大きいことが分かりました。このことより豚ひき肉の訴求の一つとして平日メニューでの訴求が有効であるのではなかと思われます。それでは、平日・休日別に豚ひき肉と一緒に購入されやすいものを調べることにより、豚ひき肉の平日における訴求方法について考えてみたいと思います。

休日は餃子や担々麺といった家族みんなで楽しむメニューの利用が多いですが、平日は中華メニュー調味料や和風メニュー調味料が一緒に買われやすくなっており、麻婆豆腐などの主菜メニューに使われていることが予想されます。なお、豚ひき肉が使われるメニューは餃子がずっと1位でしたが、ここ1年ほどでは麻婆豆腐が1位となっています。このことから、平日でも作りやすいメニューでの利用が高まっていることも分かります。
豚ひき肉の訴求としては餃子の関連販売やメニュー提案が多い印象ですが、平日においては麻婆豆腐などの中華メニューやひき肉を使った和風メニューの訴求も効果的なのではないでしょうか。


次回は惣菜部について見ていきたいと思います。お楽しみに!


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