前回「餃子の宮崎1位だけじゃない!意外なあれの都市別ランキング!」にて、餃子、外食、豆腐の都市別支出ランキングについてお話しました。意外性を感じて頂けた方も多いのではないかと思いますが、意外性があったりトップ争いを繰り広げていたりする品目はそれらだけではありません。前回紹介しきれなかった面白い動きをしている品目について、今回もいくつか見ていきたいと思います。
第1弾はこちら:餃子の宮崎1位だけじゃない!意外なあれの都市別ランキング!
参考:家計調査のいろいろな項目
目次
まずは、揚げ物惣菜について見ていきたいと思います。家計調査において揚げ物惣菜は「366コロッケ」「367カツレツ」「368天ぷら・フライ」の3項目となっています。それぞれに含まれるものについて下図にまとめてみました。
惣菜コーナーで売られている商品と加熱調理が必要なチルド品が対象となっており、冷凍品や外食店でのテイクアウト・デリバリーは含まれていないのでご注意ください。また、今回の分析対象の世帯形態は前回と同様に二人以上世帯となっております。
そして、この3項目において1位に輝いているのは同じ都市であり、それは福井市でした!
こちらは各項目の直近3年間の支出金額ランキングとなっています。2021年だけではなく連続して1位に輝いており、「366 コロッケ」は過去10年で8回、「367 カツレツ」は過去10年で9回、「368 天ぷら・フライ」は過去10年で7回と大変素晴らしい成績です。また、ランキングをよくよく見てみると同じ北陸地方の富山市も上位にランクインしていることが分かります。
では、なぜ福井市や富山市の揚げ物惣菜の支出金額が多いのでしょうか?その要因の一つとして、共働き世帯の割合が高いことが挙げられます。
図③は「366コロッケ」「367カツレツ」「368天ぷら・フライ」の3項目合計の直近3年平均での上位都市を色付けした地図と、共働き世帯割合の高い県を色付けした地図になっています。特に上位5位までで、色付けがかぶっている県が多いことが見て取れるのではないでしょうか。福井市、富山市ともに「320 食用油」の支出金額はあまり高くないので(3年平均で 福井市:51位/52都市、富山市:33位/52都市)、揚げ物が大好きな都市というわけではなく、共働きで忙しい世帯が多いため、調理の大変な揚げ物は惣菜を上手く利用しているのだと思われます。
揚げ物惣菜が強い理由としてもう一つ、「281 油揚げ・がんもどき」の支出金額の高さが考えられます。福井市は「281 油揚げ・がんもどき」の支出金額が統計を取り始めてから59年連続で1位をキープしています。すごいですね!また、近隣の富山市や金沢市も常に上位に食い込んでいます。福井は人口当たりの寺院の数が多く、寺院の精進料理で油揚げを食べていたことから、日常的にも油揚げが食べられるようになったという歴史があるようです。精進料理としての油揚げはごちそうだったため家に持ち帰り家族で食べていたということもあり、揚げ物は買って家で食べるという習慣につながったのかもしれません。
また、「366 コロッケ」のみを見てみても面白い傾向が出ていました。
こちらは「366 コロッケ」の直近3年平均の上位都市を色付けした地図になります。福井市や富山市に加え、関西地方が軒並み強くなっていることが分かります。実際に関東に比べて関西はコロッケの食卓登場が多く、惣菜利用も多いというデータもあります。北陸・関西地方ではお惣菜のコロッケをしっかりと強化していきたいですね。
続いて、カレールーについて取り上げてみたいと思います。
まずは家計調査の「333 カレールウ」の内容についてですが、カレー粉にその他の香辛料、油脂、調味料などを加えた固形、顆粒、半練のもの。となっており、カレー粉(缶・瓶)やレトルトカレーは含まれていません。
この「333 カレールウ」はどの都市が強いのでしょうか?
こちらは「333 カレールウ」の支出金額ランキングです。年によっては突然トップにおどり出ている都市もありますが、基本的には新潟市と鳥取市がトップ争いを繰り広げています。
新潟市と鳥取市の支出金額の推移を見てみると、2020年までは鳥取市が僅差で新潟市に勝っていましたが、2021年は鳥取市の支出金額が下がってしまったことにより新潟市が1位を獲得しました。個人的に鳥取市には縁もゆかりもあるので、今年はぜひ頑張って頂きたいところです。
次に、なぜ新潟市や鳥取市の「333 カレールウ」の支出金額は高いのかを考えていきたいと思います。
まずは2021年に1位に輝いた新潟市ですが、要因はいろいろとありそうです。お米の生産量が全国1位ということや、カレーによく利用されるじゃがいもや人参の支出が高いことも一つの要因かもしれません。また、新潟のご当地グルメで鶏の半身をそのまま揚げたカレー味のから揚げである「半身揚げ」がありますが、地元のスーパーではカレー味の通常サイズのから揚げも普通に販売されているようで、新潟県民にはカレー味が好まれているという事もありそうです。
鳥取市の「333 カレールウ」の支出金額が高い理由としては、鳥取の特産品であるらっきょうの収穫量が全国1位ということが挙げられるのではないでしょうか。らっきょうと一緒に食べられるメニューとしてはカレーライスが多くなっており、特産品のらっきょうをよく食べることが「333 カレールウ」の消費量増加につながったのかもしれません。また、鳥取市や鳥取県をあげて、地域振興の一つとしてカレーを強化していこうという動きも強くなっています。カレーに合うお米が開発されたり、名産品を使ったレトルトカレーは他県でもよく見かけますが、レトルトカレーだけではなくカレールーも販売されていたりするようです。こういった動きも支出金額の増加に繋がっているのではないでしょうか。
また、新潟市、鳥取市に共通する要因もありそうです。
こちらは、「333 カレールウ」の支出金額上位都市と、世帯人数の多い県、共働き世帯率の高い県を色付けした地図になります。世帯人数が多いため一度に大量に作ることの出来るカレーライスをよく作るといった理由や、共働き世帯で忙しいので次の日も食べることの出来るカレーライスにすることにより調理の時間を減らすことが出来るといった理由も考えられます。
新潟市、鳥取市の「333 カレールウ」が強い理由をまとめてみました。ここに挙げている理由がすべてではないと思いますが、要因の一つにはなっているのはないでしょうか。
ちなみに、新潟市、鳥取市ともに10万人あたりの外食のカレー店数はあまり多くなく、「手作り家カレー」というところが強くなっています。ただ、家カレーをよく食べるという事はカレー好きという事に変わりはないので、カレーの外食店や、家計調査の項目には無いですがレトルトカレーなどもチャンスはありそうですね。
今回は揚げ物惣菜、カレールーの支出金額の上位都市について取り上げました。いろいろな背景や歴史から支出金額が多い要因を考えてみるのは面白いですね。注目してみたい項目はまだまだありますので、また次回を楽しみにしておいてください!
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