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2021年のひな祭り。女の子がいる家庭はもちろん、そうではない家庭も春のイベントとして楽しみましょう!

3月3日のひな祭りは、女の子の健やかな成長と幸せを願う温かい想いを込めたイベントです。しかし少子化に伴って、ひな祭りに関連する商品マーケットは縮小してきてしまっているのが現状です…。

ひな祭りの消費状況を分析していると、必ずしもそれぞれの世帯において女の子のいるいないに関わらず、ひな祭り関連商品を購入している様子も見えてきました。女の子のいる家庭では、もちろん女の子の成長と幸せを願うイベントとして楽しんでいただきたいと思いますが、そうではない家庭でも、純粋に春のお祝いイベントとして楽しく過ごす機会にしてみても良いのではないでしょうか。今回はいろいろなお客様にひな祭りを楽しく過ごしていただけるような売場づくりを考えていきたいと思います。


目次

●ひな祭りの消費は長期的にはダウントレンド…。直前の日曜日の強化も必要!

◇ひな祭りの少子化による影響。減少してきているものも…。

ひな祭りの主役は女の子。少子化と言われていますが、ここ20年ではどれぐらい減少してきているのでしょうか。

図①は子ども(15歳未満)の人口推移のグラフです。2000年の子どもの数は1851万人でしたが、2020年は1504万人と、ここ20年だけでも約2割の減少となっています。子どもの数が減ってしまえば、子どもを対象にした市場は縮小を余儀なくされてしまいます。ひな祭りの最大イベントはひな人形を飾ることですが、ひな人形の市場規模は子どもの人口減少以上に減っているようで、ひな人形の出荷額ベースでは半分まで減ってしまっているという統計もありました(経済産業省「工業統計調査」より)。人口減少以上の下げ幅となってしまっているのは、ひな人形が、場所をとる豪華な段飾りから、リビングにも飾れて収納もしやすいコンパクトなものの方が好まれるように変化してきていることも背景にあるようです。 ひな祭りでは食の面でも少子化の影響からか、減少してきているものもあります。ひな祭りの代表的に食べられているものの一例として、ケーキ、桜餅がありますが、2000年から20年間の、3月3日に購入されるそれぞれの金額について調べてみました。

図②は総務省「家計調査」の収支項目、「ケーキ」、「他の和生菓子」について、3月3日の購入金額について2000年から2020年まで、約20年間の推移を調べたものになります。現在でもまだまだ、年間平均よりは格段に多く購入されてはいますが、他の和生菓子は約1/2、ケーキは約1/3にまで減少してきています。

◇ひな祭りは曜日周りの影響を強く受ける。直前の日曜日とセットで対策を!

ひな祭りの食品支出の面での特徴として、曜日周りの影響が強く出てくるということもあります。

図③は「家計調査」の「すし(弁当)」について、3月3日の購入金額を調べたものになります。ひな祭りではちらし寿司惣菜が多く買われて、年間平均よりも支出が約2倍に増えています。曜日周り影響として、3月3日が土曜日か日曜日になった年には金額が伸びていることがわかります。

一方で、同じく「すし(弁当)」の消費が多くなる節分の日の2月3日は巻寿司惣菜が多く買われることで、普段の10倍以上の支出になっていますが、ご覧のように2月3日が土曜日、日曜日になる影響はほとんど見られません。

ひな祭りが曜日周りの影響を強く受ける理由として、3月3日直前の日曜日にも消費が分散するということがあります。

図⑤はスーパーでの3月3日ひな祭り前後のちらし寿司惣菜の日別売上げです。2019年は3月3日は日曜日で、3月3日にだけ鋭いピークがあります。一方で、2020年は3月3日は火曜日となっており、もちろん大きなピークがありますが、その前の3月1日の日曜日にもピークができています。節分では曜日周りに関係なく、2月3日にのみピークが出ますが、ひな祭りでは、3月3日当日だけでなく、直前の日曜日にも売上げが上昇するのが特徴です。この違いの背景には、イベントの性質、楽しみ方の違いがあります。節分は世帯単位、家族単位でのイベントですが、ひな祭りは主役の女の子の祖父・祖母も参加してお祝いしてくれます。特に初節句では遠方に住んでいる場合でも招待して参加してもらう方も多いと思われます。そのため、祖父・祖母が参加しやすい日曜日にお祝いイベントが実施されるため、3月3日が土曜日・日曜日ではない時には、直前の日曜日にも分散開催されているということです。 ということで、今度のひな祭り、2021年3月3日の曜日周りはどうなっているでしょうか。

2021年3月3日は水曜日です。そして直前の日曜日は2月28日です。少し離れていますが、「ひな祭りが日曜日でなければ、その直前の日曜日にも分散開催される」法則はやはり発動されると思われます。3月3日(水)だけでなく、2月27日(土)、2月28日(日)の売場づくりもしっかりとやっていきましょう。

●ひな祭りの強化商品は?強化タイミングは?ひな祭りのそれぞれの食卓について。

◇ひな祭りに強化すべき商品とそのタイミングについて。

ひな祭りに強化していくべき商品、そしてその強化タイミングについて一覧にまとめてみました。

図⑦はひな祭りに売上げが大きく跳ねる商品の一覧表です。ピンク色に網掛けしている商品は3月3日単日の売上げが2年連続で年間1~3位を獲得している商品です。また、強化タイミングとして、3月3日当日だけでなく、直前の日曜日2月28日からしっかりと売り込むべき商品についても丸印をつけてわかるようにしています。強化軸としては、ちらし寿司を中心とした主食メニューの惣菜と手作り、おかずメニューはお肉メニューを中心とした惣菜、ひな祭りのハマグリのお吸い物、デザートとしてはひなあられや、桜餅、ケーキなどがあります。それぞれの強化軸でさらに深い現状分析と対策案について考えていきます。

◇ちらし寿司を食卓に登場させようとしているお客様は客単価が高い!惣菜利用・手作り、それぞれの強化ポイントは?

ひな祭りの一番のメインメニューはちらし寿司ですが、スーパーの来店客の内、どれぐらいの方がちらし寿司に関係する商品を購入しているのか調べてみました。

ちらし寿司惣菜については「3月3日に購入した客数/3月3日の来店客数」を、ちらし寿司の素・寿司酢については「3月1日から3日に購入した客数/3月3日の来店客数」で算出しています。ちらし寿司惣菜を購入していただいたお客様は全体の5%、ちらし寿司を手作りする調味料を買われたお客様は全体の9%と、ちらし寿司の惣菜利用と手作りの比率はおおよそ1:2となっています。年代別で惣菜利用と手作りの選択に大きな差が出てきており、30~50代の子育て世帯では手作りが多く、70代以上の高齢層では惣菜利用が多くなっています。 また、3月3日に食卓にちらし寿司を登場させようとして、お買い物をしていただいているお客様は、客単価が高く、買上げ点数が多くなる傾向があります。

図⑨は3月3日の買物カゴについて調べたもので、3月3日に買物してくれたお客様全員の客単価・買上げ点数と、ちらし寿司の素が入っている買物カゴだけの平均の客単価・買上げ点数、ちらし寿司惣菜が入っている買物カゴだけの平均の客単価・買上げ点数を表しています。ちらし寿司の素を購入したお客様は、ちらし寿司のトッピング具材やはまぐりのお吸い物の材料なども一緒に買っていただいており、またちらし寿司惣菜を購入したお客様は、にぎり寿司や巻物のお惣菜、から揚げ惣菜、ケーキや桜餅なども一緒に買っていただくことで、それぞれ客単価・買上げ点数のアップにつながっています。ひな祭りにちらし寿司を楽しもうとお客様に思ってもらえる仕掛けづくりが重要です。 それでは、まずは惣菜利用のちらし寿司から見ていきます。

ちらし寿司惣菜は年間を通してひな祭りのある週に最も大きく売れています。図⑤でも紹介させていただいたように、ひな祭り3月3日当日と直前の日曜日にピークがきます。

図⑪はちらし寿司惣菜を購入する年代について、年間平均と3月3日を比べたものですが、3月3日は30~50代で購入が増えてきています。

ちらし寿司惣菜が購入される時間帯は若年層(20~40代)、高齢層(60~80代)で大きく異なっています。高齢層はちらし寿司惣菜を普段から昼食として利用することが多いため、11時にピークがきており、3月3日も同様です。一方、若年層は普段は昼食と夕食どちらでも利用していますが、3月3日は夕食の方が大きな山となります。3月3日の購買時間帯が15時と少し早めから立ち上がっているのは、2020年2月最終週のコロナ禍での休校要請・自粛要請により、在宅している方が増えてきていたことが要因にあると思われます。

図⑬はちらし寿司惣菜の購買価格帯について、年間平均と3月3日の若年層・高齢層を比較したものです。年間では普段食として、400円未満の構成比が8割以上を占めており、500円以上はほとんどないことがわかります。3月3日は逆に若年層・高齢層ともに400円以上が約7割を占め、500円台・600円台が中心価格帯になっており、900円台以上も約2割もあります。図⑪において高齢層の3月3日の購買時間帯は普段とあまり変わっていませんでしたが、購買価格帯は若年層と大きくは変わらない構成となっており、高齢層もひな祭りを祝うちらし寿司を楽しんでいるようです。若年層向けはもちろんですが、高齢層もターゲットに含めて、おうち時間を盛り上げるアイテムとして、ちょっと豪華なちらし寿司惣菜も狙い目になるのではと思われます。

手作りのちらし寿司の状況として、ちらし寿司の素の週単位の年間売上げ推移を見てみます。

ちらし寿司の素も、ちらし寿司惣菜と同じく、年間を通してひな祭りのある週に最も売上げが高くなっています。5月5日の子どもの日や8月のお盆にもピークが見えています。

図⑮はちらし寿司の素について3月3日を中心に前後2週間の日別売上推移を見ています。手作り材料は惣菜よりも前日前々日から売上げが上がってきますが、ちらし寿司の素も2020年2月29日(土)から売れ始め、3月1日(日)と3月3日(火)それぞれの食卓での利用に合わせた動きとなっています。

図⑯はちらし寿司の素の購買年代構成比について、年間平均とひな祭り期間(2/29~3/3)を比較したものです。年間を通してでは60~70代にピークがありますが、ひな祭り期間では40~50代にピークが移り、若年層で大きく増加することを示しています。

ちらし寿司の素は混ぜご飯の素なので、トッピング素材は別で用意する必要があります。ちらし寿司の素と一緒に買われているトッピングにはどのような商品があるのでしょうか。ちらし寿司を手作りする若年層で調べてみました。

図⑰は、若年層が2020年2月29日(土)~3月3日(火)にちらし寿司の素と一緒にどんな商品を購入したかについて、ちらし寿司に使用されるであろう商品を購入されやすい順番(リフト値順)に並べたものです。例えば「いくら・とびっこ」の左側の値178は、ちらし寿司の素を買った1,000人の内178人が「いくら・とびっこ」も一緒に買っているということを、「いくら・とびっこ」のリフト値9.1は年間を通しての「いくら・とびっこ」の売れ行きと比較して約9倍買われやすいことを示しています。

ちらし寿司は彩りが大事ですが、黄色の錦糸卵、ピンクの桜でんぶ、赤のいくら・とびっこ、緑のサヤエンドウと色とりどりのトッピング具材が購入されています。寿司種セットも一緒に買われることが多くなっていますので、ちらし寿司用の寿司種セットの品ぞろえもしていきましょう。サーモン、ボイルえび、まぐろ、ほたてなどの人気の魚種をセットにしていくのがおすすめです。 また、ちらし寿司のトッピングとして春のイベント感を打ち出すのに最適な具材が菜の花です。

菜の花はちょうど旬の時期が重なることもありますが、2019年、2020年、ともに年間で一番売れる日はひな祭り3月3日となっています。2020年春の菜の花は前年割れしているように見えますが、これは菜の花の種まき時期である前年2019年秋に台風やそれに伴う長雨があったことが生育に影響したこともあるようです。緑色の具材として、同じく春が旬のサヤエンドウや、若年層に人気のアボカドもありますが、より春の演出を華やかにできる菜の花の強化もおすすめです。

◇ちらし寿司と並ぶ重要メニュー「はまぐりのお吸い物」。お麩にも特徴が出てくる!

ちらし寿司と並ぶもうひとつのひな祭りの必須メニューが、はまぐりのお吸い物です。

はまぐりは、ひな祭り前の1週間の売上げだけで年間売上の約半分を占めるほど、圧倒的にひな祭り期間に売上げが集中する商品となっています。あさりも地域性であったり代用的に利用されているようで、ひな祭り期間にピークが出ています。 はまぐりのお吸い物においては、当然はまぐりが主役で、お麩は脇役にはなってしまいますが、強化対象として面白い商品ではと感じています。

図⑳は、週単位のお麩の売上げ推移です。お麩が年間で最も売れるのは毎年決まっていて、クリスマス明けから大晦日までの約5日間ほどの期間で、用途は大晦日~お正月三が日に食卓登場が年間で最も多くなる「すき焼き」と、正月のお雑煮です。そして年間で2番目に売れる時期がひな祭りで、はまぐりのお吸い物に使用されています。

お麩はひな祭り直前の日曜日から当日にかけて売上げが上がってきています。ひな祭り期間に買われるお麩にも特徴が出てきています。

図㉒は、時期によるお麩の種類別の売上げ構成割合の比較です。年間ではお麩全体の約8%ほどの売上げの、手まり麩・花麩・彩麩が、ひな祭り期間では約40%を占めるほどになってきます。ちなみに年末期間は、すき焼き用のお麩や、正月お雑煮用の手まり麩・花麩・彩麩が伸びてきています。

図㉓は、お麩の年間での年代別売上げ構成比と、ひな祭り期間の年代別売上げ構成比を比較したものです。ひな祭り期間は、特に30~40代の子育て世帯がお麩を買い求めていることがわかります。主役の女の子にも喜んでもらえるような綺麗で彩りの良い、可愛いお麩の商品を品ぞろえしていただければと思います。 また、さらに、この彩りの良い可愛いお麩を使用した「手作りひなあられ」の提案もお麩の利用促進につながるのではないでしょうか。

コロナ禍において、おうちでの手作り菓子を楽しむトレンドが続いていることは、本ホームページでも再三お伝えしていますが、ひな祭りは他のイベントと比べると、手作りよりはケーキや桜餅などそのものを購入することが多いようです。お麩を利用した手作りひなあられという、子どもと一緒に楽しめる簡単な手作り菓子ぐらいが、ひな祭りにはちょうど良いのではと思われます。

◇ひな祭り期間の強化タイミング・強化ターゲット別の食卓傾向について。

他にもひな祭り期間の強化商品として、桜餅やケーキなどのデザート類、ちらし寿司のおかずとしての肉系のお惣菜などがありますが、紹介してきたちらし寿司やはまぐりのお吸い物などと合わせて、実施時期やターゲット別の食卓シーンのまとめを紹介させていただいて、今回のひな祭り記事をまとめていきたいと思います。

まずは直前の日曜日の食卓です。祖父母も参加する3世代パーティーです。ちらし寿司、もしくは手巻き寿司を中心にみんなで楽しめるような惣菜やケーキが並びます。

図㉖は2020年のひな祭り期間の日別データですが、フライドチキン惣菜やピザ惣菜は、3月1日(日)と3月3日(火)の2つの同じぐらい大きさのピークがあることがわかります。今度のひな祭りでも直前の日曜日である2021年2月28日でもこういった商品の強化が重要です。

そして3月3日のひな祭り当日は大きく3パターンの食卓があります。

高齢世帯では、お昼の食事として、いつもよりもちょっと豪華なちらし寿司惣菜をメインに、はまぐりのお吸い物、レトルトの茶わん蒸しが並び、デザートは桜餅です。

若年世帯では、ちらし寿司を手作りするか惣菜利用するかで、一緒に並ぶものが少し変わってきます。手作りする家庭では、ちらし寿司の素とトッピング素材でみんなで楽しく手作りしたちらし寿司と、可愛いお麩の入ったはまぐりのお吸い物が並びます。惣菜利用する家庭では、単価1,000円前後の豪華なちらし寿司惣菜と、フライドチキンやから揚げ、ハンバーグなどのお肉惣菜が並びます。若年世帯の食後のデザートは、手作り派・惣菜派、どちらもひなあられやひな祭りケーキ、桜餅なども楽しんでいるようです。ひな祭り期間の買物を分析すると、こういった大きく分けて4つの食卓シーンが見えてきました。強化すべきタイミング、イメージするターゲット、食卓に登場するメニュー、それぞれにつなげられるような売場づくりで、ひな祭りを楽しむ方を増やしていきましょう。


ひな祭りは女の子だけのイベントと枠を作ってしまうと市場はどんどん小さくなってしまいます。前回、投稿させていただいた記事で取り上げたバレンタインデーはイベントとしての楽しみ方がどんどん変化、どんどん広がっていって盛り上がりが続いてきています。ひな祭りも同様に、女の子を祝うのはもちろんですが、春の訪れを祝うイベントにまで楽しみ方を広げていくことで、さらなる盛り上がりにつながるのではないでしょうか。コロナ禍でいろいろな楽しみ方が制限されている中、おうち時間を楽しめる「ひな祭り」を提案していきたいと思います。

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