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2021年のバレンタインは、おうち時間を楽しむ家族イベントへ!チョコレートだけでなく手作り菓子の強化もポイント!

バレンタインデーが、昔からあるような「好きな人にチョコレートを渡して告白する」「友チョコや義理チョコをばらまく」といった楽しみ方から、「家族で楽しむイベント」「自分へのご褒美を楽しむイベント」に変わってきています。コロナ禍後にホットケーキミックスが売場から消えるぐらい、家庭での手作り菓子を楽しむブームが起こりましたが、コロナ禍が長引いてきている現在もこの流れは根付いてきています。さらには今度のバレンタインデーは日曜日。学校や会社での義理チョコにわずらわされることなく、おうち時間を思いっきり楽しめるチャンスになるのでは。そんな家族やおひとり様を応援できる売場をしっかりと作っていきましょう。


目次

●チョコレート全体の大きな流れについて。バレンタインデーの影響は?

◇チョコレートの長期消費推移とその歴史的背景。チョコレートに対する認識の大きな変化

チョコレートの1人当りの消費金額は長期トレンドでは大きく伸びてきています。

新しい世代ほどチョコレートの食機会や消費金額が大きくなる傾向が続いており、チョコレートを食べる習慣のある方は生涯に渡ってその傾向が続くことから、チョコレート市場は今後も伸び続けることが予想できます。

そして1年でチョコレートが最も売れるのは、もちろんバレンタインデーのある2月です。

図②は直近5年間平均(2015~2019年)の月別金額ですが、2月は年間平均の約2.5倍の消費金額となっており、大きなピークを描いています。しかし、過去には2月にもっと消費が集中していた時代もありました。

図③は各月ごとの消費金額と各年の平均ひと月当たり消費金額との比較倍率の推移です。50年前はチョコレートも他の食品と同じく、最も売れる月は12月でした。1960年代から「バレンタインデーにチョコレートを」の販売戦略は仕掛けられていましたが、火が付き始めたのは1970年代後半からで、1980年代に大きく伸長、バブル期の1992年2月は年間平均の4倍近くまで売上げが集中する一大イベントにまで成長しました。バブル崩壊以降は2月への売上げ集中は収まり始め、特に直近5年間では2月への売上げ集中割合は目に見えて下がり始めています。とは言っても、売上げが落ちているわけではなく、2月の消費金額自体は伸び続けているのですが、2月以外の月が2月以上に伸びてきており、相対的に2月への集中度合いが低くなってきているように見えるということです。
月別での伸びで特に目立つのが1月で、12月の金額を超えて、年間で2番目に多くチョコレートが購入される月にまで増加してきています。バレンタインデーのイベントとしての性質に「自分へのご褒美を楽しむ」という要素が加わってきたこと、1月から始まる「サロン・デュ・ショコラ」などの多くのチョコレートのイベントが盛り上がりを見せてきていること、などが背景にあります。また、1年で最もチョコレートが売れない月である7月・8月の伸びも年間伸び率以上に大きくなってきています。こちらはチョコレートが「子どものお菓子」「単なる嗜好品」から、「健康にも良いお菓子」「こだわりを求める大人の嗜好品」という認識で捉えられるようになってきたことが要因ではないかと思われます。チョコレートは原料のカカオでは、労働問題、気候変動、価格高騰、など問題が山積みですが、消費面でのマーケティングは菓子の中では最もうまくいっているカテゴリーと言えるのではないでしょうか。

◇チョコレートの地域別消費の特徴について。年間トップは金沢市。2月だけだと名古屋市。

日本の52都市(政令指定都市+県庁所在地)のチョコレートの消費金額5年平均(2015~2019年)で最も金額が大きいのは金沢市となっています。

ちなみに10年平均でも1位はやっぱり金沢市です。2010年から2019年までの10年間での金沢市のチョコレート消費金額の順位は52都市中で、9位→1位→1位→5位→1位→5位→15位→1位→2位→2位、と10年間で1位を4回も獲得しており上位をキープし続ける実績となっています。金沢市は他にも家計調査の項目において、他の和生菓子(ようかん、まんじゅう以外の和生菓子)、ケーキ、アイスクリーム・シャーベット、他の洋生菓子(カステラ、ケーキ、プリン、ゼリー以外の洋生菓子)、チョコレート菓子、まんじゅう、ゼリー、カステラ、プリン、などでも上位を安定して確保し続けている、和洋問わず甘いお菓子が良く食べられている地域です。金沢は歴史的に茶の湯文化があり、お茶請け菓子が発展してきた流れが現在にも続いているようです。

そんなチョコレート王者の金沢市を差し置いて、チョコレート最大のイベント月に1位をかっさらってしまうのが図④の年間ランキングでは9位につけている名古屋市です。

図⑤は直近5年平均(2016年~2020年)の2月のチョコレート消費52都市中のベストテンランキングです。2015年までの2月の名古屋市は中ぐらいのパッとしない順位でしたが、2016年から2020年までの2月の順位は、1位→14位→1位→12位→6位、と安定的に上位にランクインしてきています。名古屋市では日本最大級のチョコレートイベントが毎年1月中旬から2月14日まで開催されていますが、このイベントが近年大きく売上げを伸ばしてきていることが背景にあります。このイベントがチョコレート消費に与える影響はすさまじく、気合の入ったお買い物はついつい名古屋に出てきてしまう岐阜市と津市をベストテンに引き上げてランクインさせてしまうほどです。

◇バレンタインデーの曜日周りによる影響。2021年2月14日は日曜日。

バレンタインデーの2月14日が何曜日になるかはチョコレートの消費に影響を与えるのでしょうか?

1月~2月の日別のチョコレートの消費金額を調べてみると、1月の中旬から金額が上昇し始めてきており、その上昇度合いがここ2~3年さらに加速してきているようです。2月14日が終わると通常の消費金額にストンと落ちます。
曜日周りの影響についてですが、2月14日が土曜日だった2015年、日曜日だった2016年はバレンタインデー当日の消費は少し減少する傾向はみてとれます。しかし両年ともに、その前日・前々日の消費金額は大きくなっており、バレンタインデーの曜日周りは、期間全体としてはチョコレートへの大きな影響はないように見えます。

2021年の2月14日は日曜日です。その前1週間の強化が重要になりそうです。

●スーパーにおけるバレンタインデーの消費動向について。手作り菓子ニーズへの対応強化がポイント!

◇スーパーマーケットでのチョコレート全体の販売動向について。

スーパーマーケットにおいても、もちろんチョコレートのピークは2月です。

スーパーマーケットだけの売上げを見ても、図②の家計調査の月別データと同じ形のグラフとなっており、7~8月が底になっています。1~2月の日別データも調べてみます。

図⑥の家計調査の日別データが1月中旬から徐々に伸びてきているのと比較すると、1月中旬からの伸び具合が少し弱く、バレンタインデーの前の週の土曜日から急激に伸びてくる形のグラフになっています。バレンタインデーの1ヶ月前からのチョコレート消費は図③のところでも述べたような、百貨店などで開催されるチョコレートイベントで主に購入されていることがあるかもしれません。スーパーではサービスカウンター周りのギフト・銘菓で贈答用の高級チョコレートが販売されていることが多いので、ギフト・銘菓コーナーのチョコ商品の売上げ動向も調べてみました。

スーパーのギフト・銘菓コーナーの商品も百貨店と同じように1月から上がってきてるかな?と思いましたが、図⑨のチョコレートコーナーからさらにバレンタインデー直前のみの売上げに特化してしまいました…。では価格帯はどうなっているでしょうか?

何とバレンタインデーのスーパーのギフトコーナーでは、普段のギフトチョコよりも安価なものの方が多く買われてしまっているというデータとなっていました。やはり高級な本命チョコや自分へのご褒美チョコは百貨店やチョコレートイベントでの購入になっているようです。ただ、今度のバレンタインデーはコロナ禍以降で初めて迎える機会のため、これまでのように県をまたいでの移動をしてまでの購入や、百貨店に出向いての購入といった消費パターンが不調になる可能性が大きくなってきています。こういった需要の代替チャネルとしては通販が受け皿になる可能性が高いのですが、近隣のスーパーでも代替して獲得できるように、催事コーナーやギフト・銘菓コーナーで贈答用の高級チョコレートをしっかりとアピールして販売強化するのもひとつの作戦ではないでしょうか。

◇スーパーマーケットでのバレンタインデー強化商品・強化対策は?

バレンタインデーでは、チョコレートだけでなく、手作り菓子用の商品にも注目です。バレンタインデー期間に売上げが伸びる商品をまとめてみました。

図⑫は2020年のデータですが、「バレンタインデー期間」として、2020年2月8日(土)~2020年2月14日(金)の1週間に設定しています。売上げ金額はこの1週間の1店舗当たりの売上げを、特化度は年間の週当たり売上げ平均の何倍このバレンタインデー週に売れるか?を示しています。

チョコレート関連では、手作り材料用の板チョコ・製菓用チョコレート、そのまま食するギフト用チョコレート・チョコ系スイーツ、がバレンタインデー期間に特に売上げが伸びてきます。これらチョコレート関連の4商品について、2020年1~2月の日別の売上げ推移を見てみます。

ギフト用チョコレートやチョコ系スイーツは2~3日前から急激に伸びてきて、2月14日当日にピークを迎え、2月15日は通常日程度の売上げに落ちています。
一方、手作り材料用の板チョコ、製菓用チョコレートはバレンタインデー前週の2020年2月8日(土)から売上げが伸び始め、バレンタインデー前日の2月13日(木)にピークを迎えています。2月14日(金)もまだ金額が大きいのですが、意外と2月15日(土)も通常の3倍ぐらいの売上げとなっています。バレンタインデーが平日金曜日だったので、手間のかかる手作りを週末にスライドさせた家庭が多かったのかもしれません。ギフトチョコは2月14日という日付を重視しますが、手作り菓子を楽しむイベントとして捉えている方は、そこまで2月14日という日付にこだわりがないのかもしれません。今度のバレンタインデー2021年2月14日は日曜日なので、2月15日(月)の大きな売上げはないと思われますが、逆に2021年2月11日(木)建国記念の日の祝日、12日(金)、13日(土)への前倒しの可能性があります。

手作り材料用のチョコを購入しているのは、20~40代の子育て世帯が多くを占めています。

製菓用チョコレートは普段から30~40代が主な購入層で、バレンタインデーも同様です。板チョコは、もちろんそのままチョコレートとして食べる需要がメインですので、普段は食品全体と比較して20~40代が少し高い程度ですが、バレンタインデーには20~40代で板チョコの売上げ全体の約75%を占めるほどに極端に購買層が偏ってきます。そして板チョコと一緒に多くの製菓材料が買われているようです。

「デザート素材」には図⑫のデコペン、チョコチップ、タルト台、カラースプレーなどが含まれており、20~40代のバレンタインデーに板チョコを買った人100人の内46人がこのデザート素材を買っていることを表しています。板チョコと何を一緒に買っているのか?の組み合わせをみていくことで、各家庭でどんな手作り菓子が作られているのかが見えてきます。

簡単に作れるものから、本格的なチョコ菓子まで、幅広いメニューが作られているようです。今度のバレンタインデーは、前日の13日(土)から当日14日(日)にかけて十分に時間がとれることもあるので、複数メニューにチャレンジする方もおられるのではないでしょうか。子どもも手作りに参加できる、簡単デコチョコやチョコクッキーなどの手作り菓子へのチャレンジを誘う売場づくりをしていきましょう。

こういった家庭での手作り菓子はコロナ禍以降、急激に盛り上がりを見せ、現在もその流れは根付いてきています。

図⑰は、ホイップクリーム・生クリームの週単位の売上げ動向ですが、緊急事態宣言下の3~5月に大きな山が出来ており、解除後の6月以降も安定して前年を上回る売上げが続いていることがわかります。ホイップクリーム・生クリーム以外にも、バター、洋風ミックス粉、デザート調味料、即席デザートなども、図⑰と同じ形のグラフとなっており、家庭での手作り菓子需要が定着してきているようです。既報記事「おうちでハロウィン!「コロナ禍以降の消費動向の法則」から導き出された食卓に並ぶメニューとは?」においても、『特にコロナ禍においては、子どもと一緒に楽しく作るというニーズが大変強くなっているため、今年のハロウィンでは手作り菓子の需要も高まることが予想されます。』と書きましたが、食未来研究室の予想以上にハロウィンでは手作り菓子関連商品の売上げが跳ね上がりました。

図⑱は、ハロウィン当日と前日の10/30~31の売上げ金額と前年比を調べたものですが、バター、ホイップクリーム・生クリーム、ホットケーキミックスなど、軒並み大きな上昇幅となっています。ハロウィンでの注目商材としてはパイシートで、一緒にかぼちゃ・生クリーム・バターが買われているレシートデータが多くなっており、明らかに手作りパンプキンパイを楽しんでくれているなとわかる買物が目立ちました。

図⑲は、パイシートの週単位の売上げ動向ですが、ハロウィンをきっかけに需要がまた再燃してきている様子がわかります。バレンタインデーはハロウィンよりもさらに手作り菓子に特化してくるイベントですので、チョコレートだけでなく、手作り菓子需要も盛り上げていくような売場づくりによって、よりお客様、特に20~40代の子育て世帯のお客様に喜んでもらえるようになるのではと思われます。


今回はバレンタインデーイベント、チョコレートや手作り菓子について、現状分析から対策までお話させていただきました。本当は必ずしも甘いものが得意ではない方、お父さんなどにも喜んでもらえるような食事メニューについても記事にしたかったのですが、これを販促すれば売れると言い切れるまでの根拠のある企画提案ができませんでした…。調べていた資料でのバレンタインデーの日の食事での家族コメントの中に「夕食はお父さんの好きなメニューにした」というものがありました。各家庭によってお父さんの好きなメニューは違うのではっきりとしたデータになっていないのかもしれません。甘いものが苦手なお父さんにも喜んでもらえるようなメニューづくりも各家庭でぜひお願いしますね。

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