昨年2020年のクリスマス・年末年始はコロナ禍第3波の真っただ中で迎えることになり、飲食店は厳しい年末年始を耐える状況になってしまいました。今年2021年は、コロナ禍第5波の8月のピークから9月10月に感染者が急激に減少してきており、12月のクリスマス・年末年始期間については、第6波が来るという予測から、まだ感染者はそれほど増えないという予測まで、さまざまな見解があり、どうなるか見通しにくい状況になっています。今回は今年2021年クリスマス・年末年始の飲食店について、一昨年2019年・昨年2020年の年末年始や、今年2021年のお盆の状況などを参考に、新規感染者数が抑制された状態のグッドストーリー、感染の再拡大が起きてしまうバッドストーリー、どちらのシナリオになったとしてもチャンスになる機会について考えてみました。
目次
コロナ禍以降の飲食店全体の状況について、日本フードサービス協会様の「JF外食産業市場動向調査」からまとめてみました。
図①は飲食店全体(日本フードサービス協会会員社)の売上げの前年同月比推移ですが、2021年3月からは前年ではなく2019年同月比の数字を採用しています。
コロナ禍発生直後の2020年3月4月に大きく落ち込んだところから少しずつ回復してきていましたが、2020年から2021年にかけてのコロナ禍第3波で再び落ち込みました。2021年に入ってからも2019年と比較すると約2割減の売上げ状況で足踏みが続いており、飲食店の状況は厳しく先行きが見えません。
図②は飲食店の業態別の売上げ前年同月比推移です。図①と同じく、2021年3月からは前年ではなく2019年同月比の数字となっています。
飲食店の中では比較的ダメージが小さかったのがファーストフードです。店内飲食を伴わない、テイクアウト・デリバリー需要の増大の恩恵を最も強く受け、2020年10月には早くも前年超えまで戻ってきました。2021年もコロナ禍前の実績に戻る売上げ数字になってきています。
逆に最も厳しい状況となっているのが居酒屋です。コロナ禍直後には前年同月比9%とほぼ売上げがなくなってしまうところまでいってしまいました。少しずつ回復してきていましたが、コロナ禍第3波で居酒屋にとって最も重要な12月の忘年会・年末年始需要がなくなってしまい、2021年に入ってからも第4波・第5波と続く中で厳しい自粛にさらされています。
ディナーレストランも夜の需要が回復せず、ファミリーレストランもテイクアウト・デリバリーといった販売チャネルを強化していますがコロナ禍前から約3~4割減となっており、喫茶も外出する人の減少でコロナ禍前から約3~4割減の状況が続いています。
図③は総務省「家計調査」の外食への世帯当たりの支出推移です。2020年の9月~11月前半はGoToキャンペーンもあって前年2019年の支出に近いところまで回復しましたが、コロナ禍第3波に見舞われた2020年11月後半以降は低調な推移となっています。また、2021年の支出は5月GW以降、2020年の支出とほぼ変わらない推移となってきています。コロナ禍も1年半以上と長期化してきており、現在のコロナ禍の状態が「普通」の状態、いわゆる「ニューノーマル」という状態になりつつあるような安定した低空飛行を描いています。
プロローグでも述べたように、今後のコロナ禍がどうなるのか?、専門家の間でも意見が分かれていて、なかなか見通しが立たない状況です。グッドストーリーであれば飲食店の利用は反動で何でも伸びると思いますので、今回はバッドストーリー前提で、そんな状況でも可能性を感じるセグメントに注目していきます。
コロナ禍第3波に見舞われた昨年の年末年始の飲食店利用について振り返ってみます。
図④は2020年12月~2021年1月の日別の外食への世帯当たりの支出金額推移です。コロナ禍第3波は2020年12月中旬、特にクリスマスの前週から感染者数が一気に増加し始めて、2021年1月にピークとなりました。図④においても、年末年始の支出金額が前年と比べて大きく落ち込み、その落ち込みが1月中も続いていることがわかります。
しかし、こんなにも厳しい状況の中でも利用が減っていない、むしろ増加している飲食店利用機会もあります。
図⑤は総務省「家計調査」の外食の項目の中の「他の主食的外食」への世帯当たりの日別支出金額推移です。「他の主食的外食」には、お好み焼きやドーナツ、ピザ、お子様ランチなどが含まれますが、から揚げ・フライドチキンなどもここに含まれ、店内利用だけでなく飲食店からのテイクアウト・デリバリー利用も含まれています(店内飲食できないテイクアウト専門店からの利用は中食の「調理食品」の方に含まれます。ピザは宅配専門店からの利用もここに含まれます。ややこしくてすみません)。
12月、1月と大きく前年割れが続く推移の中で前年超えを果たしてひときわ目立っているのが12月25日クリスマスの支出金額です。ファーストフードチェーンのフライドチキンのテイクアウトや、ピザのデリバリーによって大きく数字を伸ばし、コロナ禍前の2019年12月25日を上回る支出金額となりました。
図⑥は「日本そば・うどん」の日別支出金額です。同様に厳しい前年割れが続く中で、12月31日の大晦日の年越しそば利用もコロナ禍前の2019年12月31日を上回る支出金額となっています。
こういったクリスマスや年越しそばの事例からは、普段の自粛やガマンを強いられている中での「ここだけは譲れない」「ここだけは利用させて欲しい」といった声を数字の動きから感じます。こういった共通のイベント日や、各自それぞれの大切な日については、厳しい環境の中でも飲食店を利用していただけています。これらの利用を促進するために、安全性のアピールやワクチン接種証明・陰性証明によるインセンティブ企画など、計画的に需要を確実に獲っていくことが重要です。
飲食店利用状況は年代の違いでも大きな差が出てきています。
図⑦は総務省「家計調査」の外食への世帯主年代別の世帯当たり支出金額の月別推移です。もともと飲食店の利用金額は30代~50代の子育て世帯の支出金額が大きく、60代~70代の利用金額は平均を下回っています。コロナ禍によって全ての年代で大きく落ち込みましたが、それぞれの年代の回復状況を前年比グラフで確認してみます。
図⑧は図⑦の年代別の前年同月比推移です。図①、図②と同じく2021年3月からは2019年同月比の推移となっています。コロナ禍以降の回復傾向では20代の戻りの強さが目立ちます。30代の回復も強くなっています。40代以上の回復は鈍いのですが、2020年10月~11月のGoToキャンペーンでは40代と50代では瞬間的ではありますが前年割れを脱しており、潜在的な飲食店利用意向そのものはあるのではないかと思われます。
若年層の回復傾向が強く出ているのが喫茶店利用です。
図⑨は総務省「家計調査」の外食の項目中の「喫茶代」への年代別前年同月比推移です。これまでと同様に2021年3月以降は2019年同月比推移です。ご覧のように、2021年5月ピークの第4波、2021年8月ピークの第5波においても、20代~30代、特に20代の喫茶店利用がコロナ禍前を大きく超える勢いで伸びてきています。ここには載せれませんが、他の外食データ源でも同様の傾向となってきており、長期化するコロナ禍の中で、若年層の外出が増えてきているのではないかと思われます。年末年始の若年層の喫茶利用はもともと高くなる傾向があるため、今年のクリスマス年末年始のひとつの強化ポイントとして挙げたいと思います。
図④に掲載したように、2020年12月~2021年1月の年末年始はコロナ禍第3波で厳しい数字となりました。しかしそんな中でも、寿司店への支出はコロナ禍前の2019年12月~2020年1月に近いところまで戻ってきていました。
図⑩は総務省「家計調査」の外食の項目の中の「すし(外食)」への世帯当たりの日別支出金額推移です。寿司店の利用は大晦日12/31から正月三が日にかけての4日間に大きなピークがありますが、コロナ禍においてもこの4日間で寿司店の利用は前年比79.3%と、外食全体の前年比57.1%と比較すると大いに健闘した数字になっていました。直近においても外食の項目の中では好調な分類となっています。
図⑪は総務省「家計調査」の外食の項目の中の「ハンバーガー」への世帯当たりの日別支出金額推移です。図②の飲食店の業態別の売上げ前年同月比推移でもあったように、ハンバーガーが大きな部分を占めるファーストフード店は数字的にはコロナ禍の影響をほぼ受けず、一部では逆に追い風となった部分もありましたが、2020年12月~2021年1月においても、ご覧のように週末ピークも前年を上回る支出となっています。ハンバーガーはファーストフード店だけでなく居酒屋店や焼肉店を展開しているチェーンなども参入してきており、今後も伸びてきているテイクアウト・デリバリー需要を中心に堅調な数字となることが予想されます。
これら、コロナ禍の中でも好調な寿司店・ファーストフード店は、回復の遅い60代~70代でも比較的好調なのが特徴であり、全年代をターゲットに強化していくことが必要です。
以上、コロナ禍の状況にかかわらず、今年2021年クリスマス年末年始で飲食店の強化すべき機会として、
・クリスマスパーティーのテイクアウト・デリバリー、年越しそば、などのイベントごと。
・20代~30代を中心にした若年層をターゲットにした飲食機会。
・寿司店・ファーストフード店を利用するお客さま全年代。
の3点を挙げさせていただきました。コロナ禍が10月11月時点のように感染者数の増加が抑えられた状態であれば、他の機会の回復も見込め、上記3点の機会はさらに大きく伸びるのではないかと思われます。
飲食店向け記事については、本ホームページで公開・掲載ができる外食のデータ源が少ないため、あまり多く取り上げられていませんが、飲食店の状況についても食未来研究室では調査・分析を継続しています。今後も飲食店業界の回復についての企画提案を考えていきたいと思います。
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