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コロナで変わる3月の家計簿

国内では新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着いてきたこともあり、自粛が段階的に緩和されていく傾向となってきています。しかし、感染拡大の第2波も懸念されることから明確なアフターコロナと言える時期はまだ先であり、当面はウィズコロナを意識した生活が続くと思われます。
このような状況において消費はどうなっていくのか?という事を考えていくために、今回はコロナ禍が家計にどのような影響をもたらすかを見ていきたいと思います。

目次

●2020年3月の消費はワースト6位。支出が増えたもの、減ったものとは?

表1は2000年以降の消費全体の前年同月比を悪い順番に並べたワーストランキングです。1位は2011年3月で東日本大震災があった時ですが、2020年3月は6位ということでかなり消費が冷え込んでしまったと言えます。

項目ごとの増減を見てみましょう。 図1は消費全体を10分類に分けて、一世帯当たりの支出金額を2020年3月と2019年3月とで比較したものです。スーパーは好調、外食は営業自粛で不調というニュースを目にする機会が多いと思いますが、食料費トータルで見ると99%でほぼ前年と同じ消費額となっていました。
減少が大きいのは被服及び履物費、教育費、教養娯楽費でこれらの項目が全体に影響しているようでした。10分類を更に細かく見てみましょう。

図2は食料費を更に12分類に分けて前年比を見たものです。内食、手作り関連の項目がいずれもプラスとなっています。酒類も前年比110%となっており、外食のマイナス分を家庭での食でカバーしているといった状況になっていました。

図3は食料費の中での増加率上位10項目と下位10項目を取り出してみたものです。上位には品薄状態が報道されているパスタや小麦粉ランキングされており、下位には外食支出が並んでいます。
上位にランクインしている「他の乳製品」ですが、この項目には生クリームやホイップクリームが含まれています。なぜ「他の乳製品」がこれほどまでに支出が増えてきているのでしょうか?

図4は「他の乳製品」の月別の支出金額を見たものです。2月のバレンタイン、12月のクリスマスに支出のピークがあることが分かります。以前、家庭でのお菓子作りが増えてきている記事を投稿しましたが、3月になってもその傾向は続いているようです。

図5は前年比75%まで落ち込んでしまった被服及び履物の増加率上位10項目と下位10項目を取り出してみたものです。前年を超えているものは4項目しかなく、それも生地や糸などの素材で布マスクを自作する、ステイホームだから趣味の裁縫をといった目的で購入されている事が伺えます。
前年比51%と大きく下がっている婦人用ファンデーションですが、これは体型を整えるための矯正下着です。通販で買えそうですが、家にいるんだし不要!という割り切った女性心が伺えます。

図6は家具・家事費の中での増加率上位10項目と下位10項目を取り出してみたものです。一時期欠品騒ぎのあったトイレットペーパーやティッシュが買いだめされて伸びています。また、食器戸棚やホットプレート、ホームベーカリーなどの炊事用電気調理器具など台所回りの支出が伸びており、この機会に手作りのレパートリーや調理環境を良くしようという意識が伺え、今後も手作りは継続するのではと思われます。一方、ステイホームだから模様替えでもしようかな、というニーズが増えるかに思いましたが、カーテンや室内装飾品などは大きく減少していました。3月は新生活を始めるための買物需要が大きいので、このニーズが減少した分が響いているのかもしれません。

図7は教養娯楽費の中での増加率上位10項目と下位10項目を取り出してみたものです。下位の項目には遊園地など人が集まる施設の入場料や旅行費用が大きく落ち込んでいます。上位にはゲーム関係がランクインです。例年ならばクリスマス時期にピークが来るのですが、3月でもピークの2/3ぐらいの支出額となっていました。

●年収が増えているのは上位層のみ。年収の違いによって増減率が異なる支出項目とは?

図8は年収によって世帯をⅠ~Ⅴまで5分割し、それぞれの年収額の推移を見たものです。
2012年以降、世帯年収の平均額は微増傾向にあったのですが実際には年収が高いⅤの層だけが伸びており、この層が全体平均を引き上げていたことになります。

年収五分位別で消費支出金額の前年比に差はあるのでしょうか?図9では各層の消費支出額と2020年3月と2019年3月を比較した前年比をみたものになります。いずれの層も消費全体はマイナスとなっていました。
年収が高い層の方が外食の支出割合が高く、その分の支出が減ったため前年比が低くなっているようです。
年収の違いで項目ごとの支出の増減にも影響があるのでしょうか?色々調べてみました。

図10にあるように、年収によってあまり差が出ていない項目としては食料費や衣服及び履物費がありました。

図11は年収が高いほど前年比も高くなる項目を見ています。家の修繕費や庭の植木の手入れといった住居費や教育費があります。外出できない分、家の片づけをしたり庭の手入れをしたりしているようです。
また歓送迎会の季節でもある3月という事で交際費が昨年より増えているという結果になっていました。

また食料比の増減は年収によってあまり差が無いと書きましたが、図12にありますように細かい項目で見ると生鮮品については年収が高い方がより支出を増やしている事が分かります。

それでは年収が低い層はどのような項目で支出を増やしているのでしょうか?
図13を見ると、スマホなどの通信費、酒類、そして寝具、といった項目が年収が低いほど支出が増える傾向にありました。
外出自粛をより快適に過ごそうと動画を見ながらお酒を楽しんだり、また枕や布団を新調して快適な睡眠を、という巣篭り傾向が年収が低い層ほど強く見られる結果となりました。


コロナ禍の影響が明確になり始めた3月の家計支出を見てきましたが、いかがだったでしょうか?
この3、4、5月の消費状況、ライフスタイルは緊急事態宣言が解除された後も生活習慣として暫く続くのではないかと思われます。
生活者のライフスタイルはこの3ヶ月という短期間で劇的に変化してきており、その変化の内容を掴むことでウィズコロナでのビジネスをどう展開するかのヒントになるのではないでしょうか。


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