• 日本食研グループのシンクタンクとして「食」を分析し、食ビジネス活性化のための情報発信を行います

1,505人アンケートから見えてきた、これからの飲食店に求められるコトとは?

5月25日に全国で緊急事態宣言が解除されたのを受け、5月27日~6月2日の一週間で「これからの飲食店は生活者からどんなことを求めるのか?」をテーマに本ホームページにてアンケートを実施いたしました。全国1,505人の方からご回答を頂戴することができました。皆様、ご協力、誠にありがとうございました。性年代や地域などで回答内容も異なっており興味深い分析結果も出ましたが、今回は全体でまとめさせていただき、飲食店で具体的な対策につながる内容を書かせていただきたく思います。

●コロナ以前(2020年2月以前)の水準まで飲食店利用が戻るまでには時間がかかる

図1はJCB消費NOWから引用させていただいた各業種別の2020年2月後半から5月前半の前年比のグラフです。 クレジットカードでの各業種への支払い状況から消費動向がつかめます。4月7日に緊急事態宣言が出たことで営業の自粛、短縮をする外食店が増え、4月後半、5月前半と外食業界は50%以上の減少となっています。

図2は外食の業態別の市場規模について前年同月比を2020年4月まで見たものになります。ファストフードが比較的健闘していますが、夜の売上の大きい居酒屋などの業態は壊滅的なダメージを受けています。5月のデータはまだ出ていませんが休業していたお店も多く、4月と同様の状況になっていると思われます。

営業や外出が自粛され収入が抑えられる一方で家賃などの固定費は出ていく、という厳しい状況が続いていた外食業界ですが、ようやく5月25日に全国で緊急事態宣言が解除され段階的に営業が再開されるようになってきました。飲食店はどの程度利用されるようになるのか?6月以降の飲食店利用頻度がコロナ以前(2020年2月)と較べてどうなるかを質問したものが図3になります。内容が食に特化している本ホームページで行ったアンケートなので、食に興味のある方、おそらくは外食も好きな方から多く回答いただいていると思うのですが、それでも8割の方が飲食店利用の頻度が低くなるという回答でした。

図4ではコロナ以前(2020年2月)と同程度の飲食店利用に戻るタイミングについて質問していますが、ワクチンや特効薬の承認、世界的な収束を基準とする方が約65%を占めていました。各国で開発が進められているワクチンですが、まだ明確な時期が定まっておらず、世界的な感染者数を見ると収束には程遠い状況となっており、コロナ以前の状況に戻るのはまだ時間がかかりそうな感じがします。

緊急事態宣言が解除され、実際に生活者の行動はどうなっているのでしょうか?飲食店ひしめく 東京・新宿の 歌舞伎町の人口密度を2020年6月1日(月)20時と2019年6月の平日20時の平均値で比較してみたのが図5になります。こちらはモバイル空間統計/ドコモ・インサイトマーケティング(http://www.dcm-im.com/info/provide_free_mobaku_population_map.html)様より提供いただいたデータを使わせていただいており、ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みをもとに一辺500mの正方形の中の人数を知ることができます。ご覧のように2019年は歌舞伎町ゴールデン街の所は51,200人以上の人がいたのに対し、解除後すぐの2020年6月1日の20時では12,800人以上と四分の一程度に留まっていました。札幌のすすきの、大阪の梅田、福岡の中州と全国見てみましたが歌舞伎町同様に人出は戻ってきていないようでした。都内では6月2日に東京アラートが発動され、改めて先行きの不透明さが感じられる状況となっています。

このような状況下ではありますが、国土交通省の「令和2年度国土交通省関係補正予算の概要」を見ると補正予算案額1兆6,794億円をかけてGo To キャンペーンが7月中に開始される予定となっています。飲食店に関しては「オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約・来店した消費者に対し、飲食店で使えるポイント等を付与」などが盛り込まれており、最大2割相当分の飲食代が割り引かれるキャンペーンなのでかなり効果が期待できるのではないでしょうか?

図6ではこのキャンペーンが飲食店利用のきっかけになるかを質問しており、ここでようやく5割の方から前向きな回答を得ることができました。7月の感染者数の状況にもよるとは思いますが、飲食店の皆様は利用増加を見込んで今から飲食予約サイトへの登録など準備を進めておく必要がありそうです。

●飲食店利用が増える可能性の高い「ランチ」需要を捉える

図7では今後増える可能性のある食シーンを質問しており、平日、休日共に昼食利用が増えるという回答が突出していました。なぜその時間帯が増えるのか?という追加質問に対しては、自炊疲れや友人と食事に行きたいなどの回答以外にも「夕食利用だと店内の滞在が長くなってしまう」、「ランチなら短時間で済ませられる」といった回答が多くみられ、「店内滞在を極力短いものにしつつ、外食を楽しみたい」といったニーズが伺えました。

売上は客数×客単価で計算することができますが、コロナショックでは特に客数の部分が大きく落ち込んでしまっています。客数は席数×回転率ですが、席数は密を避け間隔をあける必要があるため増やすことは難しい状況です。売上を上げていくためには客単価か、回転率を上げる必要があり、ここでは回転率を上げる取組みについて考えてみます。

ランチ利用が伸びる背景には店内滞在時間を短くしたいという生活者のニーズがあり、回転率を上げたいお店側のニーズとも合致しやすいと思われます。提供時間が短く、食べる時間も短いメニューを強化することで回転率アップを狙えそうです。
提供時間、食べる時間共に短いメニューとしては丼やカレーがあげられます。実際に3月の飲食店での丼やカレーの利用状況は全体平均より高く、特にカレーは前年比プラスの推移を示していました。下のようなPOPで訴求することでお店と生活者の双方にメリットをもたらすことができるのではないでしょうか。

また、需要が見込まれるランチについては、ランチタイムを延長するのも一つの方法だと思います。ただ「ランチタイム延長しました」という告知をするのではなく、下記のPOPのように「早割」&「遅割」の時間帯を設けることで、お客様にもメリットがあり、インパクトのある訴求ができるのではないでしょうか。

飲み会も回転率アップのショートプランを

図8では飲食店を利用する際の同伴者数を質問したものですが、圧倒的に2~4人が多く多人数の宴席はまだ難しい状況のようです。図7で飲み会が増えると回答した人の理由を見ると、3、4月に予定されていた歓送迎会が延期となっており、少人数でも実施したいからという回答も多くありました。飲み会にはどんなスタイルが求められるのでしょうか?後で出てくる図10では「大皿料理は避けたい」と回答した人が半数を占め、従来の取り分け方式ではなく、withコロナの時代には宴席にはお膳を一人一人に用意するスタイルになっていくのではないでしょうか。「飲み会はしたいけど短い時間で切り上げたい」という回答も多くみられましたので飲み放題30分コースなどショートタイムのプランも考えていく必要がありそうです。

●入店から支払いまで。求められる感染症対策ランキング

図9では飲食店への入店時にどのような対策を希望するかを質問したものです。発熱のあるお客様への入店禁止などはお願いしづらい所もありますが、入り口付近に何らかの告知を設けるなどの配慮が求められそうです。

図10は店内での対策について質問したものです。作業が増えてしまいますが、お客様が入れ替わるごとの消毒を求めるという回答が最も高くなっていました。

図11は支払い時の対策について質問したものです。入店から支払いまで、希望するものを複数選択で回答してもらいましたが、全項目にチェックを入れられる方も見られました。 感染症対策を行うとともに、それを実施している事をしっかりとお客様に伝えて安心していただく必要があるように感じました。


今回は皆様にご協力いただき、飲食店に求められるコトについて見てきました。アンケートデータを分析してみますと思っていた以上に飲食店利用については慎重な意見が多くありましたが、それ以上に自粛疲れ、手作り疲れ、外出願望が見られ、「飲食店に行きたい!」と思っている方たちが非常に多いことも感じられました。当面厳しい状況が続くとは思いますが、今後も少しでも売上につながる方法を発信していきたいと思います。


記事についてのお問合せはこちらから。
記事・データの商用目的での使用はご遠慮ください。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

3 × three =