
「抹茶ブーム」という言葉を耳にするようになって久しいですが、実際のデータを見ると、そのトレンドはまだ終わっていません。むしろ、ここ1〜2年で世界的な加速が確認されており、国内でも、かつては春に集中していた抹茶需要が秋冬にも高まってきています。
本記事では、検索データ・スーパーのID-POSデータをもとに抹茶需要の現状を整理し、今すぐ取り組める売場戦略を考えていきます。
目次

図①を見ると、世界の「matcha」検索数は2024年から2025年にかけて特に大きく伸びており、数年前から続いていたトレンドが一段と加速していることが分かります。健康志向の高まりとSNSによる拡散を背景に、「映えるヘルシードリンク」として世界中で支持が広がり、日本の輸出データにもその影響が表れています。農林水産省の発表によると、日本の緑茶輸出額は2025年に約720億円と前年比約2倍に達し、6年連続で過去最高を更新しました。伸長をけん引しているのは、ラテやスイーツなど食品原料として使われる抹茶を含む粉末茶の需要拡大のようです(出所:農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」)

また、国内の「抹茶」検索数を見ると、かつては春にピークを迎えて秋冬に落ち込むパターンが続いていましたが、直近1〜2年はその落ち込みが年々小さくなり、高い水準を維持したまま推移しています(図②)。

同時に検索されるキーワードにも注目です(図③)。「抹茶ラテ」は日本でも世界でも検索上位に位置していますが、2006年にスターバックスが北米で「Matcha Latte」を常設化して以降、抹茶は”コーヒーに次ぐ第3のカフェイン飲料”として定着し、ウェルネス志向の高まりとともに世界中に広がりました。近年はSNSを通じて「自宅で抹茶を点てたい」「本物の抹茶を試したい」という層も急増しており、図③の検索キーワードにある「作り方」「抹茶パウダー」への関心もその表れといえます。内食需要の影響か、抹茶パウダーは売り切れる店舗もあらわれるほど人気となっています。
国内では「宇治抹茶」や「抹茶チョコ」への関心も伸びており、海外から逆輸入されるかたちで産地へのこだわりや海外インフルエンサーのSNSで人気となったチョコ商品が国内消費者にも広がっている様子が見て取れます。
コンビニ各社は毎年4〜5月の新茶シーズンに合わせて抹茶フェアを実施しています。2025年もファミリーマートが4月に「抹茶withフルーツ」フェアとして抹茶×いちご・ゆずなどの商品を展開し、セブン‐イレブンは5月に「めっちゃまっちゃ」と銘打った抹茶フェアで宇治抹茶スイーツを複数投入しました。
コンビニのフェアが需要を喚起し、「また食べたい」と思った消費者がスーパーの売場を訪れる—そのサイクルは毎年繰り返されています。コンビニと同時期にスーパーも抹茶企画を打つことで相乗効果が狙えるため、4〜5月の売場展開は前年から計画に組み込んでおきたいところです。

図④はスーパーにおける抹茶関連商品の売上推移です。毎年2〜5月頃に大きな山ができており、新茶の季節(4月下旬〜5月)とも重なっています。では、それ以外の時期はどうでしょうか。
実は、スーパーの抹茶関連商品は秋冬(9〜2月)においても前年比が上昇傾向にあります。1章で見た検索データの高止まりと一致するこの変化は、抹茶商品がもはや2〜5月だけ売れる商品ではなくなってきたことを物語っています。もちろん、春~初夏にかけてが一番売れる時期ではあるのですが、「春だけ抹茶を並べる」という売場戦略は見直しのタイミングを迎えており、秋冬も抹茶カテゴリーを縮小しすぎず、「クリスマス×抹茶」や「SNSで映える温かい抹茶ドリンク」など季節感と組み合わせた提案で、年間の売場づくりを考えていく価値があるのではないでしょうか。

分類別に見ると、菓子類が最も大きく、次いで飲料、穀物類と続きます(図⑤)。菓子類は春(2〜5月)に売上の山がある一方、飲料は温かい抹茶ドリンクへの需要が秋冬に高まるため秋冬に山がある分類です。そして直近は、菓子類・飲料ともに秋冬の期間で前年を上回る傾向が見られます。春を中心に抹茶菓子の特集コーナーを設けているお店はすでに多いかと思いますが、飲料も含めて秋冬の売場を意識することが、今後の売上底上げにつながると考えられます。

図⑥はカテゴリー別の直近1年の売上金額と前年比を示したものです。全体的に前年を上回るカテゴリーが多いですが、特にチョコレート、和風半・生菓子が売上は大きく、前年比も伸びており、注目すべきカテゴリーことが分かります。また、洋風乾菓子の大きな伸長は人気商品「チョコパイ」の抹茶味が投入されたことが大きな要因の一つで、一つのヒット商品がカテゴリー全体の数字を動かした事例となっています。

図⑦は抹茶関連チョコレートの商品名を分析し、商品名に入っているキーワード別の売上を直近1年と前年で比較したものです。全体的に前年を上回っていますが、「濃い」と入った商品の伸びが際立っています。これは、抹茶チョコに求めるものが”なんとなく抹茶っぽい”ではなく、”しっかりと抹茶を感じられるもの”へとシフトしていることを示しています。「宇治」というキーワードも売上が大きく伸びている事や、図③で示した検索データでも「宇治抹茶」への関心が高まっていたことからも、消費者は単なる”抹茶フレーバー”から”本物の抹茶感”へと移ってきていると言えるのではないでしょうか。
棚に並ぶ抹茶チョコの中でも、そうした訴求のある商品を優先して品揃えし、POPなどでもキーワードを強調させることが、手軽に取り組める施策の一つです。チョコレート売場では、バレンタイン・ホワイトデーはもちろん、ハロウィンやクリスマスなど年間の季節行事とも組み合わせながら「抹茶チョコ」の特集コーナーを年間通じて維持し、売上の底上げにつなげていきましょう。

図⑧は抹茶関連和風半・生菓子(羊羹・どら焼きなど)の商品名に入っているキーワード別の売上を、直近1年と前年で比較したものです。最も売上が大きく、かつ前年からの伸びも際立っているのが「小豆」と「宇治」です。「宇治」は産地訴求として消費者の本格感ニーズに応えるキーワードであり、「小豆」は抹茶との相性が良い定番素材として根強い人気があります。チョコレートと同様、こだわりを感じさせる商品が選ばれやすい傾向は和菓子カテゴリーでも共通しています。データ上は「小豆」と「宇治」はそれぞれ独立したキーワードとして伸びていますが、「宇治抹茶×小豆」の組み合わせは和菓子の王道として消費者にも馴染み深く、品揃えや商品開発の軸として提案しやすいのではないでしょうか。
本記事では、検索データとスーパーのID-POSデータをもとに、抹茶需要の現状とスーパーの売場戦略について考えました。
抹茶ブームは一過性のトレンドではなく、世界規模で根を張りつつあります。国内でも秋冬の前年比上昇が見られ、抹茶は今や、年間を通じて売れる商品へと変わってきています。スーパーでもしっかりと需要を取り込めるよう、まずは品揃えとPOP表現の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
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今回の記事では、検索データとスーパーのID-POSデータを組み合わせることで、「抹茶」というテーマから売場戦略について提案させて頂きました。
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