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単身世帯の消費~34歳以下単身世帯で伸びている内食への対策編~

前回の記事では、単身世帯全体の現状についてお話しました。世帯数の増加は食市場に与える影響が大きく、単身世帯はもう少しの間増加傾向にあるということ。また、単身世帯の年代別の食料費についても簡単に触れました。
それに続き、本記事以降では単身世帯の年代別の対策について考えていきたいと思います。今回、まずは34歳以下の単身世帯について見ていきます。


●34歳以下単身世帯の食料支出の状況は?

前回の記事では内食・中食・外食と大きなくくりでの変化を見ましたが、もう少し細かく見ていきたいと思います。

図①は、家計調査において34歳以下単身世帯が購入しやすい項目です。飲酒代をはじめ、ピンク色に色付けた外食の項目を中心に並んでいます。内食(手作り)の項目は上位には入っておらず、外食や中食を利用する方が多くなっています。

しかし、前回の記事でも載せたとおり、34歳以下の単身世帯で伸びているのは内食です。もちろん利用されやすい外食の項目を押さえておくことは大事ですが、今後を考えると伸びている部分もしっかりと把握しておく必要があります。

それでは、この伸びている内食の中でどのような項目が特に好調なのでしょうか?

こちらは、家計調査の内食における大分類別の支出金額と5年前比です。図③をみると、どの項目においても5年前より支出金額が増加しているのが分かります。ただ、多く報道されているように様々な商品で値上げが続いているため、その影響を受けていることは確かです。物価上昇の影響も踏まえて考えるために、図③に物価の上昇具合も加えたグラフも見てみます。

以前の「外食店の現状は?~好調カテゴリーの要因と不調カテゴリーへの対策~」の記事でも同様の分析をしましたが、再度グラフの見方を説明します。図➃は、項目別の支出金額(青色棒グラフ)をあらわすとともに、支出金額の2019年比(赤色折れ線グラフ)、CPIの2019年比(黄色折れ線グラフ)を示しています。注目していただきたいポイントは、支出金額とCPIの2019年比の位置関係です。CPI>支出であれば物価の上昇に支出が追い付いていない状態。CPI<支出であれば物価は上昇しているがそれ以上に支出が伸びている、利用されている。と考えることが出来ます。
支出金額だけを見るとどの項目も2019年比を超えていますが、魚介類は物価の上昇に支出が追い付いていない状況です。それに対して、果物、肉類、油脂・調味料は特に支出とCPIの2019年比の開きが大きく、物価の上昇以上に支出が伸びている好調な項目といえます。

今回はこの中で、果物、肉類について、さらに詳しく見ていきたいと思います。

●果物は健康をイメージできるあのメニューに注目!

まずは、果物についてです。

こちらは、果物の品目別の支出金額とCPIの増減をあらわしたグラフとなっています。なお、カットフルーツや冷凍果物も各品目の中に含まれており、品目にない果物や、盛り合わせ、カットフルーツミックスなどは「他の果物」となります。(果物加工品は缶詰やドライフルーツなどです)特に需要が高まっているものは、ぶどう、桃、すいかとなっています。ただし、これらは季節性があり通年の対策は考えづらいため、今回は支出金額が最も大きく需要も高まっている「他の果物」にふれたいと思います。

スーパーの直近の増減状況を見ると、この他の果物に含まれるカットフルーツミックスは果物全体に比べて好調に推移しています。カットフルーツミックスにも様々な種類がありますが、私たち食未来研究室が注目しているものとしてスムージー用のカットフルーツがあります。その理由として、単身世帯が“健康”に対して積極的であるという側面があるからです。

図⑦は、食以外も含めた支出項目すべてで単身世帯に特徴的な項目を示しています。黄色に色づけた趣味や娯楽にお金を使いがちであったり、青色に色付けたように不摂生な部分もあったりしますが、緑色に色付けた健康関連の項目も多く入っていることが分かります。このような状況からも、下図のようなスムージー用カットフルーツの品揃えも喜んでいただけるのではないでしょうか。

お店にスムージー用の機器があると、その場でも飲んでいただけるのでターゲットを増やすことが出来るかと思いますが、それが無くてもスムージー用に組み合わされた果物や野菜の組み合わせも需要はあるのではないかと思います。カット済みの果物や野菜がセットになっていれば、ジューサーやミキサーにそのまま移し替えるだけで済みます。家庭でのジューサーやハンドミキサーの需要が高まっている現在では、これにより忙しい方でも手軽に手作りスムージーが作れるのではないでしょうか。

●お肉の状況と世界で人気のトレンドメニュー

続いて、肉類の状況を見ていきます。

こちらは果物と同様に、肉類の支出金額とCPIの5年前比をみたグラフです。牛肉のみが物価の上昇に支出が追い付いていない状況で、また、豚肉も物価の支出の伸びが同じくらいとなっており需要はあまり増えていないと考えられます。今回は支出金額が大きく、なおかつ伸びている鶏肉について考えていきたいと思います。

鶏肉を使うメニューとして、今、全世界でトレンドとなっている「Marry Me Chicken(マリーミーチキン)」というメニューをご存知でしょうか?

こちらはMarry Me Chickenの世界での検索数推移です。元々海外のレシピサイトで2016年に紹介されたレシピになるのですが、当時は大きくトレンドなることはありませんでした。しかし、時を経て2022年頃にSNSをきっかけに世界中にトレンドとして拡大し、伸長し続けています。

Marry Me Chickenとは、焼いた鶏むね肉をドライトマトやパルメザンチーズなどを合わせたホワイトソースで煮込んだ料理です。メニュー名の通り、結婚したくなるほど美味しいと言われており、アメリカのニューヨークタイムズでも2023年に最も人気のあるレシピとして発表されています。日本でも2024年の冬頃から関心が高まっており注目すべきメニューの一つです。そして、メインの材料は比較的安価な鶏むね肉なので試してもらいやすくもあるのではないでしょうか。

続く物価の上昇!物価高の現状把握と主食カテゴリーでの需要の変化は?」の記事で乾燥パスタにチャンスがあるとお伝えしましたが、Marry Me Chickenはパスタとの相性が良いメニューです。

こちらは、Marry Me Chickenと一緒に検索されたワードを調べたグラフです。赤色で色付けしている通り、パスタとの同時検索が多くなっていることが分かります。もちろん、おかずとしての定番のレシピ提案も良いと思いますが、乾燥パスタとの関連販売でパスタの1品としての提案も面白いのではないでしょうか。


今回の記事では、34歳以下の若年単身世帯の現状と対策についてお話させて頂きました。長くなってしまったので、35歳以上については次回以降の記事で見ていきたいと思います。ぜひ引き続きご覧ください!


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