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注目の大豆ミート!買っているお客さまはどんな方?

食品業界に限らず一般でも話題になってきている「大豆ミート」。ヒット食材やニュートレンドと注目を集めてきている一方で、実際の現場からは「いまいち売れないけど…」という声も聞こえてきます。今回はスーパーでの大豆ミート商品の購買動向から、お客さまが大豆ミートに何を求めているのか?を考えていきたいと思います。


目次

●スーパーマーケットにおける大豆ミート商品の売上げ状況について。

「大豆ミート」に対する関心は、2020年から急激に高まり始めています。

図①は「大豆ミート」の検索数推移(グーグルトレンドより)ですが、2019年まではじわじわと上昇という感じだったのが、2020年から急に増加してきています。大豆ミートについては、タンパク質危機対策やヴィーガン対応といった背景によって以前から取組みが進んでいましたが、コロナ禍による健康意識の高まりが強い後押しとなって一気に伸びてきました。

スーパーでも大豆ミート商品の売上げは増加してきています。

まだまだ売上げ金額は小さいですが、直近2年間で約6倍にまで伸びてきています。

図③は大豆ミート商品の商品数推移です。スーパーの春夏向け新商品発売タイミングである2~3月に商品が増えて売上げも伸びてきていることがわかります。

ただ、商品数が伸びたことだけで売上げ金額が伸びてきているわけではありません。

図④は大豆ミート商品1品当たりの売上げ金額です。金額が上昇してきているのがわかりますが、商品単価の上昇というわけではなく、購入者が増えてきたり、繰り返し買う方が増えてきていることが1品当たりの売上げ金額の上昇につながってきています。

図⑤は大豆ミート商品の売上げ分解式について、直近1年間と同期間の前年比を比較したものです。新たに大豆ミート商品を買うお客さまが2倍以上に増えてきており、かつ頻度も増加、つまり1度買った方がまた買ったり他の大豆ミート商品を買ったりといったことも増えてきています。

売上げを伸ばしてきてる大豆ミート商品ですが、買っているのはどの年代でしょうか?

図⑥はスーパーの食品全体の年代別売上げ構成比と、大豆ミート商品の年代別売上げ構成比を比較したものです。スーパーの食品全体は現在は70代が最も大きい売上げ構成比を占めていますが、大豆ミート商品は50代に最も多く購入されています。本格的に健康に気をつけ始める年代、体の不調が少しずつ出始める年代は50代が多く、その傾向が大豆ミート商品への関心につながっているのではないかと思われます。大豆ミートに関する記事では、「大豆ミートは環境問題やサステナビリティに対する意識の高い20~30代の支持が高い」といった論調のものも見かけます。確かに意識調査では20~30代の関心度は高いのですが、お魚と同じように「食べたい」という意識はあっても「購入する」という行動には結びつきにくい、といった現象が起きているかもしれません。 大豆ミート商品を購入されるお客さまの全体的な傾向について、大豆ミート商品購入者の普段の買い物傾向を調べてみました。

図⑦はスーパーの買い物客全体の平均と比較して、大豆ミート商品を買っている方の普段の買い物傾向を表しているもので、例えば大豆ミート商品購入者は買い物客全体よりも1.4倍野菜を買いやすいことを示しています。大豆ミート商品購入者は、普段、野菜・お魚・お肉といった生鮮素材を良く買っており、大豆ミート商品を買っているからと言ってお肉を買わないわけではないようです。惣菜や菓子・お酒は比較的買われにくい傾向があり、商品単位で見ていくと、ささみや糖質カット麺、玄米など雑穀類も買われやすくなっていることから、健康意識が高いことがわかります。一方でレトルト商品や半惣菜、カット野菜などの簡便商品も買われやすくなっており、合理的な考えを持つ消費者像が浮かんできます。

●大豆ミート商品の用途別カテゴリーの売上げ状況。求められているコトとは?

◇素材・調味料・調理品、それぞれの用途別カテゴリーの売上げ状況と求められているコト。

大豆ミート商品についてその用途別に分類してみると、素材・調味料・調理品の3つに分けることができます。素材は大豆ミートのミンチ形状のものなど肉原料の代わりとして使えるもの、調味料は大豆ミート入りで野菜などを加えて加熱調理などして仕上げるもの、調理品は大豆ミートのハンバーグなどの調理加工品など温めたりしてそのまま食べるものや大豆ミートのミートソースなど麺やご飯などにかけるだけで使えるものを分類しています。

図⑧はスーパーの2021年1~6月期間の大豆ミート商品の用途別カテゴリー別割合です。素材は23%、調味料は17%で、調理品は60%と最も多くなっています。 素材・調味料・調理品、それぞれの売上げ推移も見ていきます。

2020年2~3月のスーパーの春夏向け新商品投入のタイミングが、コロナ禍の始まりと重なり、健康意識の高まりから売上げを伸ばしてきています。素材、調味料も伸びていますが、調理品の伸びの大きさが目立ちます。調理品は商品数も多くなってきているので、各メーカーが積極的に投入してきていることも背景にあるようです。

図⑥で大豆ミート商品全体での購買年代層は50代がピークになっていることを紹介しましたが、素材の大豆ミート商品でその傾向が最も強く出ています。調理品は素材や調味料と比較して40~60代の幅広い層で購入されているようです。

図⑩を見ると、スーパーの食品全体の山よりは大豆ミート商品の山は左に寄っていることから、大豆ミート商品は若年層に支持されている印象を受けますが、個別の商品分類の中で比較して見るとまた違った様相を呈してきます。

図⑪はレトルトミートボールとレトルトハンバーグ、それぞれの商品分類全体での年代別購買金額構成比とそれぞれの商品分類の大豆ミート商品の年代別購買金額構成比を比べてみたものです。レトルトミートボールはお弁当需要が多いため全体としては40代がピークになっていますが、大豆ミート商品のレトルトミートボールは50代をピークに高齢層寄りにずれてきています。レトルトハンバーグでも同様に商品分類全体よりも大豆ミート商品のレトルトハンバーグは高齢層寄りになっています。

図⑫は畜肉のひき肉と、ひき肉素材タイプの大豆ミート商品、それぞれの年代別購買金額構成比を比べてみたものです。畜肉のひき肉が40代ピークなのに対して、ひき肉素材タイプの大豆ミート商品は50代ピークとなっています。 図⑥の大豆ミート商品全体の購買年代層を調べたところでも言及しましたが、「大豆ミートを支持しているのは20~30代の若年層だ」という認識が広まっているため、大豆ミート商品の特に調理品は比較的若い年代をターゲットにしたメニューのものが多くなっています。しかし大豆ミート商品の実際の購買層は20~30代よりも、50~60代の中高年層の方が多くなっているようです。現時点での大豆ミート商品の購買は現実的な健康問題を抱え始めた中高年層に支持が集まっています。直近の売上げの獲得を狙うには中高年層にもなじみのある定番メニューの投入の方が有効そうです。

◇素材と調理品の大豆ミート商品のトレンドと、それぞれの購入者像について。

素材の大豆ミート商品について、形状タイプ別に売上げ推移を調べてみました。

素材の大豆ミート商品では、ミンチタイプの商品が順調に売上げを伸ばしているようです。メニューの幅広さや使いやすさが支持されているのではないでしょうか。

調理品の大豆ミート商品については、メニュータイプ別に売上げ推移をみてみます。

調理品の大豆ミート商品では、ナゲット、ハンバーグ、ミートボールと、定番メニューが売上げを伸ばしてきています。畜肉のひき肉を使用したメニューでは、餃子、ハンバーグ、麻婆、シュウマイ、ミートソース、メンチカツ、ミートボール、といった料理が上位にきます。調理品の大豆ミート商品では現時点ではあまり見かけない、餃子やシュウマイといったメニューの大豆ミート商品は狙い目ではないかと思われます。

さらに素材の大豆ミート商品、調理品の大豆ミート商品、それぞれが買われている買い物カゴを分析することで、それぞれの購入者が求めているコトを明らかにし、大豆ミート商品の可能性を考えていきたいと思います。

素材の大豆ミート商品購入者は、糖質カット麺や高野豆腐、麹などの健康志向の商品を買いやすい傾向があり、大豆ミート商品に健康や高タンパクを求めていることがわかります。逆に素材の大豆ミート商品購入者に買われにくいものでは、惣菜やお酒、菓子などが目立ち、こういったところからも強い健康志向を感じ取れます。

調理品の大豆ミート商品購入者では、レトルトや半惣菜、冷凍食品などの簡便商品が買われやすい傾向がありました。基本的には簡便性を重視しており、ちょっと健康も気にして調理品の大豆ミート商品を利用している様子が伺えます。

また、素材の大豆ミート商品購入者、調理品の大豆ミート商品、どちらも子供菓子やスナックは買われにくい傾向があることから、子どもの巣立ちを終えた中高年の夫婦世帯が想像できます。 大豆ミート商品の商品開発や販促検討では、こういった購入者像をペルソナに設定して考えていくことで、支持されやすい、売れる確率が高い施策を打っていくことができるのではないでしょうか。


今回は話題の「大豆ミート」に着目して、現時点で生活者が大豆ミート商品に求めているコトを探ってみました。今はまだ環境問題への対応や代替肉的なポジションでの売込みよりは、わかりやすい健康的な食品・食材としてのアピールの方が効果的なようです。今後の動向を注意深く見ていきたいと思います。

●どんなメニューの大豆ミート商品が食べたいですか?投票(vote)をお願いします!

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