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続く物価の上昇!物価高の現状把握と主食カテゴリーでの需要の変化は?

近年、物価高に関するニュースを見る機会は多く、最近では4月に食料品の大規模な値上げが実施されたと聞いた方も多いのではないでしょうか。
㈱帝国データバンクの調査によると、主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした4月の飲食料品値上げは4225品に上るとされており、値上げのピークを迎えた23年10月以来1年6カ月ぶりに単月で4千品目を超えたようです。また、2025年通年の値上げは9月までの公表分で累計1万1707品目に上り前年実績の9割超の水準に到達する見込みであり、値上げの勢いは止まりません。(㈱帝国データバンク 「食品主要195 社」価格改定動向調査 ― 2025年4月より)
このような状況下でスーパーはどのような品目、商品にチャンスがあるのでしょうか?今回の記事では、物価高の現状を把握するとともに、高くなっても売れている商品、チャンスの大きい商品などについて調べていきたいと思います。


●食料の物価高についての現状把握

総務省のホームページでは消費者物価指数(CPI)という物価の指標となる数値が毎月公開されており、この数値の流れをみることにより物価の上がり下がりを把握することが出来ます。
こちらは、食品だけではなく光熱費や雑費などすべての消費において、2020年1年間を基準(100)として変化をみたグラフです。

消費全体のCPIは2022年頃から大きく上昇していっていることが分かります。
食料の項目についても同様に見てみると、

食料のCPIは消費全体以上に上昇しており、食料のCPIが大きく上昇しはじめたタイミングが消費全体のCPIの上昇タイミングと重なることから、食料の物価上昇が消費全体に影響を与えていることが予想できます。 ここ数年は賃上げのニュースも多く、収入も増加しているのではないかと考えられますが、物価の上昇と比べた時の収入の上がり具合はどのようなものなのでしょうか?物価が大きく上がり始める前の2020年頃からの変化を見てみたいと思います。

こちらは年別の消費全体と食料のCPIの推移と2020年を100とした時の勤め先収入の推移です。収入はボーナスの影響により月によって変動が大きいため、年間のデータで比較しています。給料も上がってはいますが物価の上昇には追い付けておらず、生活者の節約志向を避けることは難しい状況です。

また、こちらは家計調査における2024年の項目別の支出金額と、2020年と比較した2024年度の項目別のCPIです。こちらを見ても、食料は支出金額が最も大きく、さらに物価も最も上昇しており、特に家計に大きなダメージを与えているのが分かるのではないでしょうか。生活に欠かせない食料品ですが、このような現状から生活者の方々は食費に対してよりシビアになることが考えられます。
次に、その食料の分類別の変化についても見てみたいと思います。

図⑤は家計調査における食料の分類別の支出金額と、2020年と比較した2024年度の項目別のCPIです。どの項目も2020年と比べて物価は上がっており、その中でも特に穀類、魚介類、果物の上がり幅が大きくなっているようです。
穀類の上昇は、毎日のようにニュースで報道されているお米が大きな要因です。

こちらは穀類の品目別のCPIの変化ですが、米類は目をそらしたくなるような上昇具合です。インターネットでお米の安いスーパーを調べる生活者も多く、主食であるお米を何とか安く手に入れようと模索しているようです。
日本人には欠かせない食材であるお米がこのような状況となっていますが、主食として他の穀類のチャンスが高まっているのでしょうか?それとも、価格が高騰してもなお、お米が優勢なのでしょうか?
今、生活者に何が求められているのかを探っていきたいと思います。

●値上がり中のお米は他の主食カテゴリーに取って代わられるの?

家計調査のお米の支出金額と数量の推移をみると、2024年に値上がりの影響で支出金額が大きく増加しています。しかし、値上がりによって購入数量が減少することはなかったようで、2024年の数量は横ばい傾向にあります。(図⑦)

また、お米は長期的に購入数量が減少しており他の穀類との差が縮まってきていましたが、ここ3年程は差の拡大は見られません。(図⑧)

家庭での食卓の状況をみてみても今のところお米の利用に大きな変化はなく、値上がりしても使い続けられている状況となっていました。長期的な変化を見るとお米以外の主食の需要が高まってきていることは間違いありませんが、近い未来では需要に変化はみられるのでしょうか?
それについて考えるために、まずはスーパーにおける主食カテゴリーのおおよそ1食あたりの原価を調べてみました。(各カテゴリーの売上金額上位品の平均値で計算。1食分の量目は、パッケージに記載のある商品についてはその通りに、記載のない商品についてはAI検索により推定。)

主食カテゴリーの商品を直近1年間の売上金額順に並べ、直近の2025年4月の1食あたりの原価と、比較として1年前の2024年4月の値をグラフにしました。なお、今回は公平性を期すために、カップ麺やお惣菜、一食完結する冷凍食品などの即食系は除き、あくまで調理が必要なものを抽出して比較しています。
全体的に1食あたり原価は上昇傾向ですが、やはりお米の上がり具合が飛びぬけて大きくなっています。しかし、他の主食カテゴリーと1食あたり原価を比較してみると、お米はまだまだ安い部類に入っているようです。現在の値上げの勢いが止まることなく上がり続けてしまうと話は別ですが、現状の範囲内だとお米を他の主食に置き換えるのは割高になると感じる生活者も多いと思われます。お米や米飯調味料などのお米周りの商品、お米をまじえた提案は減らすことなく訴求し続けたほうが良さそうです。特に“丼”は家庭での食卓出現が上がり続けているメニューとなっているので、是非とも売り場で推していきましょう。

●お米以外の主食カテゴリーでチャンスがあるのは?

また、お米以外でチャンスがあるとしたらどのカテゴリーになるのでしょうか。先ほどのグラフをもう一度見てみたいと思います。

グレーの点線が直近でのお米の1食あたりの原価になっています。この点線より折れ線グラフの値が小さいカテゴリーがお米よりも1食あたりの原価が安いカテゴリーです。その中でも売上金額が大きいカテゴリーからみてみると、食パン、乾燥パスタ、シリアルがあげられます。
また、スーパーにおける主食カテゴリーの購入点数の変化も調べてみました。

こちらは、主食カテゴリーの直近1年間の売上点数と前年比をあらわしたグラフです。売上金額で比較すると値上げの影響も反映されてしまうため、今回は売上点数を比較することで購買状況の変化を見ています。うるち米以外で前年よりも購入量が増えているものは、乾燥パスタ、シリアル、包装餅、麦・玄米・雑穀となっています。図⑩の1食あたりの原価が安いカテゴリーでも出てきていた乾燥パスタとシリアルは原価も安く伸びており、特にねらい目と言えるのではないでしょうか。さらに、ここ数年間は1食卓における品目数が減ってきているという背景もあるため、そういった面でもパスタとシリアルはチャンスがありそうです。


値上げが止まらず生活者側も販売者側も頭の痛い日々が続いていますが、こういった状況の中でも生活者の方に喜んでもらえるような、購入していただけるようなヒントを今後も考えていきたいと思います。今回は主食カテゴリーに注目しましたが、次回以降の記事ではその他のカテゴリーも詳しく見てみようと思いますので、ぜひ引き続きご覧ください!


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