コロナ禍以降、外出することが減ったり大人数で食事をとることが減ったりと様々な行動の変化がありました。なんとなくこんな行動は増えた、減ったと分かる部分もありますが、実はこの行動の変化については政府が統計をとっています。今回はその中でコロナ禍により変化が見られた「睡眠時間」について、どう変化したのか?関連品の動向はどうなっているのか?みていきたいと思います。
目次
総務省統計局では膨大なデータがあり誰でも見ることが出来ますが、今回は「社会生活基本調査」という統計データを利用します。社会生活基本調査では行動時間の変化や余暇時間の活動状況などを5年に1回のペースで調査されており、長期の変化も見ることが出来ます。このデータを用いて、まずは睡眠時間の変化を見てみます。
こちらは睡眠の一人一日あたりの平均時間です。(行動をしなかった人も含んだ平均値です。)2016年までをみると睡眠時間は年々減少傾向になっていますが、コロナ禍中の2021年は今までの流れから一転、増加に転じていることが分かります。コロナ禍で家にいる機会が増えたことにより、睡眠時間が増加したことが想像できると思います。
最近、この「睡眠」を訴求する商品を目にする機会が増えましたが、スーパーでの売上はどうなっているのでしょうか?
こちらは、商品名に睡眠関連ワードが入っている商品、パッケージで睡眠を訴求している商品を合計した売上金額推移となっています。2021年の秋ごろから大きく伸び、直近でも増加傾向にあることが分かります。コロナ禍で睡眠時間が増え、せっかくなら更に充実した時間にしたいと考える人が増えたのではないでしょうか。
実際、睡眠について満足していない人は多いようです。
図③は厚生労働省「国民健康・栄養調査」における睡眠の質についての調査結果です。日中に眠気を感じたり、睡眠全体の質に満足できなかったり3人に2人は睡眠について何かしらの不満を抱えています。
この睡眠の質について生活者の関心動向をみてみました。
こちらは「睡眠の質」というキーワードの検索数推移です。年々増加しており、特にコロナ禍以降大きく伸びていることが分かります。睡眠の質について生活者の関心が高まっているようです。
では、この”睡眠の質をあげる”などと訴求されている睡眠関連商品は誰が購入しているのでしょうか?
睡眠関連商品の年代別売上構成比をみてみました。すると、スーパーの食品全体に比べて50-60代に特に購入されやすいことが分かります。もともと健康やダイエット関連商品は50代に買われやすい傾向がありますが、その傾向がさらに強く出ています。
この理由として年代別の睡眠時間の違いも挙げられるのではないかと考えます。
年代別の睡眠時間を比べてみると睡眠関連商品を購入しやすい50-60代の睡眠時間が特に短くなっており、短い睡眠時間をより質の良いものにしたいという気持ちが強いのかもしれません。
睡眠時間を快適にするものとして今まではベッドや枕などの寝具を工夫することが一般的でしたが、外側だけではなく内側からのケアも今後は注目していきたい部分です。
睡眠以外の行動時間の変化についても少し紹介したいと思います。
図⑦は「交際・つき合い」の平均時間の変化です。コロナ禍により人との接触が制限されたり、自主的に控えられたりしたため大きく減少した事に意外性は無いと思いますが、実はそれ以前から年々減少傾向にありました。メディアなどで、若い世代ほど飲みに行かなくなっている、人付き合いが少なくなっているという話も聞きますが、この傾向は若年層だけではありません。年代別でみてみると、どの年代も同じくらいの減少が見られます。
また、図⑦とは逆の傾向にあるものとして「休養・くつろぎ」の時間が挙げられます。コロナ禍に関わらず増加傾向にありましたが、コロナ禍でその傾向がさらに強くなっています。この傾向は他の行動でもみられ、「趣味・娯楽」、「身の回りの用事」も同様の傾向となっていました。これらの行動に共通することとしては、“自分(家族)の時間”ではないかと思います。全体的な傾向として、他人との付き合いよりも自分や家族との時間を大切にする人が増えている傾向にあり、この自分や家族との時間を充実させるための商品や提案は今後も需要が高まっていくのではないでしょうか。
今回調査した行動時間など、生活者のライフスタイルは変化していっています。商品の動向やトレンドをおさえることも大切ですが、生活者のライフスタイルの変化も把握し、それに対応した商品展開や売り場づくりをおこなっていきましょう。
記事についてのお問合せはこちらから。
記事・データの商用目的での使用はご遠慮ください。