• 日本食研グループのシンクタンクとして「食」を分析し、食ビジネス活性化のための情報発信を行います

早くも始まっているスーパーの秋冬向け鍋商戦!
~鍋に求められるコトとは?今年の鍋商戦を勝ち抜くポイントは?~

少しずつ暑くなってきて初夏から盛夏へと向かいつつある日々ではありますが、コロナ禍で大変なスーパーの裏側では早くも秋冬の鍋の商談が始まろうとしているようです。昨年までの鍋の状況、そしてコロナ禍の影響、様々な要因がからみ合う今年の鍋はどうなるのでしょうか?今回は日本一早い(間違ってたらごめんなさい…)今年の鍋商戦を勝ち抜くポイントについてお届けいたします。


●今年は家での鍋にチャンスあり!

鍋と言うと、やはり寒い季節のメニューですが、家庭で食べ始められるのは意外と早く、毎年9月ぐらいから鍋メニューが登場し始めます。

こちら図①はスーパーでの「鍋料理の素(つゆ、固形、顆粒など)」(以下「鍋つゆ」と表記)の月別売上について、2018~2019シーズンと、2019~2020シーズンの動向を見てみたグラフです。「鍋シーズン」が9月~3月であることがわかります。では9月のどのタイミングから売れ始めるのか?先日、気温と食品の売れ筋の関係性についての記事(今年の夏は暑くなりそう!気温と売れ筋の関係性とは?)を掲載しましたが、鍋の場合は最低気温が20℃前後を下回ってくると食卓での登場が増えてくる傾向があるようです。また、2018~2019シーズンは暖冬、2019~2020シーズンはさらに暖かい記録的暖冬と、どちらのシーズンも鍋メニューの出番にとっては逆風でしたが、スーパーの鍋つゆの売上的にはどちらのシーズンも同じような売上、同じような流れのようでした。

では今年の2020~2021シーズンの鍋はどうなるでしょうか?気温予測はまだ発表されていないようですが、影響を与えそうなのが今回のコロナ禍による外食を敬遠する動きです。通常年の外食での鍋の利用回数は、家での鍋の登場が9月~3月の緩やかな山(図①)になるのと比較すると、11月~1月にするどいピークがある山となるのが特徴です。しかし、今年はコロナ禍により、外食での鍋の利用が減るのはほぼ確実なため、外食の鍋需要が家での鍋需要に置き換わるのではないでしょうか。
また、今回のコロナ禍は2019~2020鍋シーズンも終わりの時期と重なりましたが、2月末のイベント自粛要請・休校要請以降、鍋つゆの売上は前年を上回り続けました。(図②)

鍋つゆ以外にも、白菜・春菊・水菜などの鍋野菜も大きく売上を伸ばしており、外食が出来ない時の家族団らんメニューとして鍋が特に選ばれていたことがわかります。気温予測までは不確実ですが、こういった背景からも、今年の家向けの鍋は強化すべきであると断言出来ます。

さて、家で鍋をしようと考えている買い物客はスーパーにとってはありがたいお客様です。

ご覧のように、鍋つゆを買ってくれたお客様の買い物カゴには、通常の2倍近い金額・点数の商品が入っています。(図③)野菜・お魚・お肉・日配など、鍋つゆを買ってくれたお客様は惣菜以外のありとあらゆる商品をたくさん買ってくれています。鍋をしようと考えているお客様の来店増加や、買物中のお客様に今日は鍋にしようかなと思ってもらえるような売場づくりなどが重要です。

ではこの9月~3月までの鍋商戦において、最も重要なのはいつだと思われますでしょうか?売上ピークの12月前後を挙げる方が多いとは思いますが、最も重要なのは実は9月です!

図④は鍋つゆをそのシーズンに初めて買った月のお客様ごとに、その月に何回鍋つゆを買ったか?をシーズン通して調べたグラフです。9月に初めて鍋つゆを買ってくれたお客様は、10月に初めて買ったお客様・11月に初めて買ったお客様、それぞれと比べてシーズンを通してずっと鍋つゆの購入頻度が高くなっています。さらには最も金額の高くなる12月単月だけで比べても9月に初めて買ったお客様の金額が一番高くなっています。(図⑤)

こういった数字を見ると、鍋商戦は立ち上がりの9月で決まる!と言っても過言ではないのではないでしょうか?もちろん、まだそこまで寒くはない9月から鍋をする生活者はもともと鍋好きなのではないかとも言えますが、こういった鍋好きのお客様を確実にゲットしていく売場づくりを9月からしっかりと作り込んでいくのがポイントです。

●鍋つゆの味別・種類別動向はどうなってる?

鍋つゆはどんな味・種類のものが売れているのでしょうか?

こちら図⑥は2019~2020シーズンの鍋つゆの売上ランキングです。すき焼き、キムチ鍋、寄せ鍋、豆乳鍋、といった定番鍋が上位にきています。豆乳鍋の位置は以前はちゃんこ鍋でしたが、ちゃんこ鍋は減少を続けており、豆乳鍋にポジションを明け渡した感じです。そして2017~2018シーズンからグイグイ伸びてきているのが、あごだし鍋です。鍋つゆはやっぱり出汁の訴求が大きなポイントであり、商品名に「出汁」がつく商品が前年比で約1.5倍に増えてきていますが、差別化と万人受けの両方を満たしているあごだしが広く人気を集めてきているようです。今年の鍋つゆ商戦も「出汁」にこだわった商品が多く出てくることが予想されます。
また鍋つゆを購入してくれているお客様の内、約2/3は2種類以上買ってくれており、1回目はキムチ鍋や寄せ鍋などの定番鍋を、2回目以降はちょっと変わり鍋を購入してくれる傾向が見えてきており、鍋好きのお客様を飽きさせないラインナップも必要なようです。

これらのいろいろな鍋つゆですが、9月~3月の鍋シーズン中でもそれぞれ食卓に登場しやすい時期に特徴があります。

図⑦は図⑥の2019~2020シーズン全体のグラフを、9月~3月に分解して見てみたものです。ちょっと数字が細かいですが、3パターンに分かれるようです。

・ 12月に強く売上が集中する鍋つゆ…すき焼き、かに鍋。

すき焼きは年末年始の家庭での実施率が極めて高い鍋です。傾向としては大晦日の食卓登場が多いのは比較的高齢層の家庭が多く、正月三が日は若年層から高齢層まで広く食卓に登場しています。1年で最も和牛が売れるのは12月30日・31日であり、和牛を使ったすき焼きが年末年始の家族のごちそうメニューとなっていることがわかります。ただ、すき焼きはあまりにもごちそうメニューのポジションになり過ぎてしまっており、以前投稿した記事「スーパー畜産部での長年の不振カテゴリーである牛肉…特に課題だった若年層向けの牛肉消費が今伸びてきている!」でも取り上げましたが、ごちそうメニューのポジションになり過ぎると中長期的には衰退していく傾向となっており、すき焼きも食卓登場が徐々に減ってきています。

・9月~3月までの売上の変化が比較的少ない鍋つゆ…キムチ鍋、スンドゥブ、チゲ鍋、担々鍋。

辛い系の鍋は、他の鍋つゆと比較して9月~3月までの売上の変動が比較的おだやかです。鍋つゆシーズン始まりの9月に売れやすいのもキムチ鍋です。鍋好きのお客様を獲得していくための9月の売場強化はキムチ鍋を主役に作り込んでいくのが良いのではないでしょうか。

・鍋つゆ全体と同じ傾向の売上変化の鍋つゆ…寄せ鍋、豆乳鍋、ちゃんこ鍋など。

平均的な鍋の食卓登場と同じ傾向の売上となる鍋つゆです。逆に言えば、気温の変化の影響を受けやすい鍋つゆでもあります。鍋は素材でも肉鍋、魚鍋とわけることが出来ますが、比較的、気温の影響を受けにくいのは魚鍋です。ざっくりとした年代別の鍋の特徴として、肉鍋は若年層に多く、魚鍋は高齢層に多いという傾向があります。若年層は気分で、すなわち気温の変化で鍋にするかしないかを決めているようで、肉鍋は暖冬のタイミングで食卓登場が減ります。一方、高齢層は暦(こよみ)で鍋をするかしないか決めているのか、魚鍋は暖冬の時の減少があまりありません。

●鍋つゆの使い方タイプ別(ストレート、ボトル希釈、小分け)の傾向

鍋つゆは使い方タイプ別でも生活者の求めるコトが見えてきます。

2019~2020シーズンの鍋つゆデータから、ストレートタイプ、ボトル希釈タイプ、小分けタイプ、の売上金額構成割合を見てみました。(図⑧)ストレートタイプが6割近く、ボトル希釈タイプが約1/4、小分けタイプが約2割となっており、近年の傾向としては小分けタイプが伸びてきているようです。

ストレートタイプ、ボトル希釈タイプ、小分けタイプ、それぞれの月別売上推移は異なった動きを見せています。(図⑨)ストレートタイプはオフシーズンは売り上げはほとんどなく、12月に大きなピークを見せます。ボトル希釈タイプは、すき焼きのたれやキムチのたれなど、オフシーズンにも使われることも多く、ピークは12月になっています。小分けタイプは他の2タイプとは異なり、11月にピークとなり、12月には早くも下降してきています。11月までは1人や2人といった少人数で鍋をする人も、12月になると忘年会や帰省など大人数の集まりが増えて、ストレートやボトルを使用したり、少人数で鍋をあまりしなくなることが背景にあると思われます。

●鍋つゆと一緒に買われやすい素材を強化!

図③や図⑤でも述べましたが、鍋つゆを買ってくれるお客様は鍋用の素材をたくさん買ってくれる、スーパーにとっては上顧客です。それぞれの鍋つゆで一緒に買われやすい素材が違ってきていますので、その違いを把握して売場づくりをしていく必要性があります。すき焼き、キムチ鍋、寄せ鍋、豆乳鍋、それぞれについて見ていきます。

まずは野菜から。リフト値とは軸となる商品との一緒に買われやすい度合いを示しており、例えば上のグラフですと、豆乳鍋のラインの水菜が15ぐらいの値となっていますが、これは豆乳鍋のつゆを買う人は全体と比較して約15倍、水菜を買いやすい、ということを表しています。 すき焼きは春菊、キムチ鍋はニラ、豆乳鍋は水菜と買われやすいことがわかります。

お魚は寄せ鍋が強くなっています。たらやカキ、ホタテなどの魚介類と特に一緒に買われやすくなっています。寄せ鍋の次に海鮮キムチ鍋が良く実施されているようです。

お肉では、すき焼きは牛肉と、キムチ鍋と豆乳鍋は豚肉と、寄せ鍋は豚肉・鶏肉と一緒に買われやすくなっています。

その他、日配品や半惣菜などでは、寄せ鍋は鶏つみれなどや鍋用セットと、すき焼きは白滝やお麩と、キムチ鍋はキムチ漬けと一緒に買われやすくなっています。

さらに鍋はやはり〆も重要で、一緒に買われやすい麺類を調べてみると、

キムチ鍋の〆はラーメン、寄せ鍋の〆はうどん、豆乳鍋の〆はラーメン・うどんの他にもパスタが候補となっていることもわかります。すき焼きの〆はうどんが強くなっています。すき焼きでは、そばもリフト値が高くなっていますが、これはすき焼きのたれが12月30日、31日に買われやすく、年越しそばもそのタイミングで買われることから、たまたま同じ買い物カゴに入ってしまっただけではないかと分析します。

それぞれの鍋つゆと一緒に買われやすい素材について、一覧にまとめてみました。

今夜は鍋!明日は鍋!と考えているお客様に満足してもらえるような、お客様の買い物カゴを一杯に出来るような売場づくりをしていきましょう!


今回は今年の秋冬の鍋について参考になるんじゃないかなと思うことを記事にしてみました。不確実性があふれてきている今は、未来予測が以前よりもさらに難しくなってきています。だからこそ日本の食ビジネスに貢献出来るような記事を今後も提供出来るようにしていきたいと思います。


記事についてのお問合せはこちらから。
記事・データの商用目的での使用はご遠慮ください。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

eighteen − 17 =