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スーパー畜産部で好調の豚肉と鶏肉。
コロナ禍以降さらに売上を伸ばしているのはどんな理由?求められているコトとは?

前回は、スーパー畜産部で伸びてきている牛肉についてお話しさせていただきましたが、今回は豚肉と鶏肉について取り上げていきたいと思います。
まずは豚肉についてですが、コロナ禍以降、スーパー畜産部の売上上昇と同じく大きく上昇してきています。 (図①)

豚肉は年代別ではもともと若年層に買われやすいお肉ですが、この2~3ヶ月ではこの若年層で特に売上を伸ばしてきています。前回の記事(スーパー畜産部での長年の不振カテゴリーである牛肉…。特に課題だった若年層向けの牛肉消費が今伸びてきている!)では牛肉の課題についてお話させていただきましたが、伸びている豚肉にも実は大きな課題があります。
豚肉の課題、それは小間切れ肉、切り落とし肉が若年層に良く売れるということです。
「えっ?良く売れるならいいじゃない?何で良く売れることが課題になるの?」
買っているお客様はあまり意識していらっしゃらないかもしれませんが、豚肉に「小間切れ」「切り落とし」という部位は存在しません。ロース、バラ、モモといった部位を成型加工していった時に出る端材から出来るのが「小間切れ」「切り落とし」であり、一般的には複数の部位を集めたものが「小間切れ」、特定の部位の端材からだけなるものが「切り落とし」とされ、端材なのでどちらも比較的安価で売られています。「小間切れ」「切り落とし」の定義については明確なものはなく、複数の部位を集めたものも「切り落とし」と言うお肉屋さんもあるようですが、いずれにせよ、「小間切れ」「切り落とし」は、基本的にはロースやバラ、モモといった部位が売れてはじめて出来るものであり、「小間切れ」「切り落とし」だけが売れてしまっても、品ぞろえの点でも、儲けといいう点でも困るということです。図②の直近3年間だけのデータを見ても、「小間切れ」「切り落とし」だけが数字を伸ばしているのが目立ちます。(図②)

こういった豚肉の課題に対して、コロナ禍以降もやっぱり「小間切れ」「切り落とし」は好調に売れ続けていますが、ありがたいことにそれ以外のちゃんとした「部位」も同様に売れてきています。(図③)

注目したいのが、豚ブロック肉が伸びてきていることで、特に若年層だけで見てみると、前年比146%と大きく伸びてきています。なぜ「ブロック」が若年層に売れていることに着目するのか?その理由は、カットによる年代間での買われやすさの違いにあります。

この、どの年代に買われやすいかのグラフを見てみると、「小間切れ」「切り落とし」が先に述べたように若年層に買われやすいのですが、一方、「ブロック」の山は右側に寄っており、「ブロック」が高齢層の方に買われやすいことを示しています。
今回のコロナ禍以降の豚肉の売れ行きの変化は、豚肉の課題である、若年層が「小間切れ」「切り落とし」ばっかり買っていく、ということの改善につながるきっかけになっていくのではないでしょうか。
とは言え、なぜ若年層がこれまではそれほど買っていなかった「ブロック」を買ってくれているのかを理解しておかないと、もとの流れに戻ってしまいますので、豚の「ブロック」肉に求められているコトを調べていってみましょう。

豚のブロック肉を利用した家庭で作られるメニューとしては、角煮・煮豚、とんかつ・ヒレかつ、カレーライス、酢豚、焼豚・ローストポーク、などがあるのですが、わかりやすく一緒に買われやすい調味料では、角煮のたれ、煮豚のたれ、酢豚の素、カレールーなどがあります。(図⑤)

この中でも若年層に特に一緒に買われやすいのが、角煮のたれや煮豚のたれで、豚のブロック肉そのものは前述した通り、高齢層に買われやすいのですが、角煮のたれや煮豚のたれと豚のブロック肉を一緒に買われる場合は、大きく若年層へと買われやすい山が移動します。(図⑥)

今、若年層が角煮や煮豚を家で調理している理由としては、数年前から注目されてきている「ほったらかし調理」というこれまでの流れの継続からきているものと、コロナ禍以降の「こだわり調理」へのチャレンジという新しい流れの2つの側面があるようです。

「ほったからかし調理」では新しい調理家電の売り上げが伸びてきていたり、炊飯器を使った角煮や煮豚の調理レシピが多くネットに投稿されてきていること、「こだわり調理」では豚ブロック肉と一緒に、八角(スターアニス)や黒糖、紹興酒などのこだわり素材が一緒に買われてきていることが観察されます。(図⑦)

豚肉については、「小間切れ」「切り落とし」を使った簡単フライパン調理だけではないメニューの訴求、豚肉の楽しみ方を広げていくことがポイントとなりそうです。


一方、鶏肉についても、豚肉と同じく、コロナ禍以降、売上を伸ばしてきています。(図⑧)

鶏肉は牛豚鶏の中では中長期的には最も伸び率が高く、豚肉と同じように特に若年層からの支持が高いお肉です。そして鶏肉の場合の課題は、鶏肉そのものと言うよりは、畜産部全体の課題となるものです。鶏肉の利用が伸びている背景としては、肉野菜炒めやカレーライスなど、牛豚鶏どの肉を使っても成立するメニューで鶏肉が使われることが多くなってきていることや、それどころか酢豚や肉じゃがなど一見成立しなさそうなメニューでも鶏肉が使われるようになってきていることがあります。牛豚鶏の中では一番安価な鶏肉ばかりが使われることは、中長期的な観点から考えると畜産部全体の売上としてはあまり好ましい状態ではないかなと感じるところです。

鶏肉について、部位ごとの直近の売上状況を年代別に見てみます。

やはり若年層ではどの部位も売上を伸ばしてきていますが、高齢層でも鶏手羽の売上が伸びてきているところに目がいきます。(図⑨)若年層でも高齢層でも伸びている鶏手羽ですが、どんなメニューに利用されているのでしょうか。鶏手羽とどんな調味料が一緒に買われているのかを年代別で見てみます。

若高での違いに注目してみると、若年層では、から揚げ粉や甘辛たれが一緒に買われることが多く、高齢層では煮物メニュー系の調味料が一緒に買われやすいことがわかります。(図⑩)若年層、高齢層、それぞれのメニューイメージ、求められてるシーンイメージをまとめると図⑪のような感じでしょうか。

若年層では「手羽先の甘辛揚げ」のようなメニューをおかずにすることもあるでしょうが、おつまみ的にも使用されているのではないでしょうか。一方、高齢層では、ひざ痛などの間接や骨の悩みへの対策として美味しく効率よくコラーゲンやカルシウムが取れる「手羽元のさっぱり煮」が夕食のおかずとして食べられているシーンが浮かびます。

鶏肉の課題で述べたように、鶏肉はいろいろな使われ方が広まってきて、単純な、から揚げメニュー訴求、焼鳥メニュー訴求だけではお客様に刺さらなくなってきています。食卓での新たなメニュー利用動向や、年代別などの生活者に求められているコトの違いを把握していく必要性を感じます。


2月最終週のイベント自粛要請、休校要請から、早くも3ヶ月近くが経とうとしています。スーパーの売れ行き動向を見ていくと、カップ麺やお米のように最近ではすっかり落ち着いて前年並みの販売動向になっているものもあれば、キムチやナチュラルチーズ、デザート調味料のようにまだまだ前年を大きく上回る販売金額の日が続いている品目もあり、少しずつ変化してきています。自粛解除の動きも出てきている中で、withコロナの食生活がどうなっていくのかを継続的に考えていきたいと思います。


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